「俺の秘密基地」by 紬-つむぎ- ページ26
.
――小さいころ、親や友達にも内緒の自分だけの秘密基地を持っていた子供は多いだろう。
大人になって、窮屈で、大変で、自分だけのスペースが無くなってしまった人もいるだろう。
いくつになっても、どんなに仲いい友達にも知られたくない場所はきっとあって。
その居心地の良さを誰にもとられたくないから、そんな場所を秘密基地と言うのだろう。
*****
「Aー！今日の日替わり何？」
「今日は肉じゃがとー……」
「もう肉じゃがの時点で俺の好物やん！」
最近、毎晩俺は行くところがある。
うらさんたち連れてきてもえぇかなって思うんやけど
でもやっぱ俺だけの秘密にしたくて………
「はーい、お待たせ。日替わり定食だよ。」
「おぉぉぉ！うまそうやな！」
バランスの取れて、かわいらしい食器に盛りつけられた定食に
思わずよだれがこぼれそうになるのを止める。
初めて来た日からライブやどうしても外せない用事の時以外は毎晩通っているこのお店。
カウンター席と、小さなテーブル席。
まだ新しい木の匂いがして、やわらかい光が落ち着く店内。
まだ、開店して間もないこの店は他にお客さんもそんなにいない。
まぁ、時間が時間やからかもしれへんけど…そう思いながら肉じゃがを口に入れる。
かなりの時間、煮込まれているということは料理をほとんどしない俺でもわかる。
しっかりと味がしみ込んでいて、野菜も柔らかい。
「うん、めっちゃ美味い！」
「坂田君、本当においしそうに食べてくれるよねぇ。」
「だってめちゃくちゃうまいもん！」
入り口から1番遠い、カウンター席の端っこ。
ここが俺の特等席で、いつ来ても他の客が来てもこの席だけは空いているから
多分、彼女もここは俺の席と思ってくれているのだろう。
この店に入ったのは偶然なんだが、この店を切り盛りしている彼女とは知り合いだった。
俺がほんの少しだけ看護師として勤務していた病院に、同じ年に入ってきた管理栄養士。
それが彼女で、たまに昼一緒になったりとか同期の飲み会とかで一緒だったし
比較的話す方だったから、俺がやめてからけっこうな年月が経っているが覚えている。
「ふぅー…ごちそうさまでした！うまかった！」
「お粗末様でした…坂田君、デザート食べる？」
「えぇの！？」
「うん、ちょっと試作品だから。」
内緒ね？と出されたのはきなこがかかっているお餅やった。
試作品の味見なら任せとき！！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：作者一同 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月29日 22時
