「泣き虫」by こんぺいとう。 ページ23
「ただいま〜」
残業で遅くなった帰り。今年3歳になる娘が寝てるかもしれないと気を使って静かに声をかければ、玄関の方に彼女が向かってきた。
「お疲れ様。鞄もらうよ」
「いいよ。どうせリビングに行ったら置くし」
「それは、そうだけど……。あれ？コンビニ寄ってきたの？」
視線を俺の手元の方に移した彼女の目に止まったのは多分コンビニの袋。会社からの帰り道にある24時間営業のコンビニでデザートコーナーにあるシュークリームをひとつ買った。
「うん。お土産」
「わぁ、シュークリームだ。姫に？」
「ちがーう。Aに買ってきたの」
「え？なんで？」
本当に分からないような顔をする彼女。育児をしながら家事をして、その上在宅ワークまでしている彼女に少しでも息抜きが出来たらいいなと思って買ってきたシュークリーム。
今まで休みの日にしか遊んであげれない姫には美味しいものやおもちゃなんかを買ってきてあげたけど、彼女には渡したことが無かったなと思ったのだ。
「今日、何かあったっけ…？」
「たまたま帰り寄って、それで、目に入って、Aが好きだったなーって思い出して買っちゃった」
「もー。無駄遣いしたらダメだよ。今月厳しいんだよー？」
「無駄遣いじゃありませーん」
ご飯にしちゃうから、早く行くよ。なんて言ってリビングへと向かう彼女。その後ろ姿はやっぱりどこか無理をしているように見えた。
「ごめんね。姫相手にしてたら簡単なものしか出来なくて」
「全然いい！というか全部うまそー！」
いただきマース！そう言って食べ進める夕食。姫は今日は散歩に行って疲れたらしくもう夢の中。夜ご飯も食べずに寝たから、もしかしたら起きちゃうかもなんて言っている彼女はどこからどう見ても母親の顔をしてた。
「美味しい！世界一！」
「ふふっ、毎日そう言ってくれて嬉しい」
「ねー。洗い物後で俺するから、こっち座って」
「え？何いきなり」
いいけど。なんて言って水を止めて俺の対面に座ろうとする彼女をとめる。
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作者名：作者一同 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月29日 22時
