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「うらさん！よっ」
「よっ……って、まーしぃは？」
次の日、毎日仲良し4人組で食べている坂田はいつもは一緒ではない私の机と自分の机を当然のように向かい合わせにくっつけて、久しぶりのお昼ご飯にそれは良い反応をしてくれた。大して凝ることの出来なかった普通のお弁当なのに、すごいすごいと喜んでくれるものだからシンプルに気恥ずかしくて。
そんな時にいつも通り現れたのが隣のクラスのうらたくんである。教室内に見当たらない紫を探しつつ、私には今日はここなんだ？と声をかけながら坂田の隣に机をつけた。
「生徒会。センラは？」
「なんか女子に呼び出しくらってた」
「うっわぁ出た出た」
モテモテな友人に苦い顔をしながら坂田は卵焼きを頬張った。途端少しだけ緩んだ頬がとてつもなくかわいい。これだけで作ってきて良かったなんて思えてしまう。
自分も食べようとご飯に箸を向けた時、うらたくんはちょっと待てと急に声をあげた。
「え、じゃあ今日はこの3人？」
「ん？うん」
「俺ここにいちゃダメだろ」
「なんでー？」
もぐもぐと咀嚼しながら呑気に応える坂田に便乗して私も頷いた。むしろお邪魔しているのは私の方だし。2人でそうやってはてなを浮かべていれば、うらたくんは苦笑いを浮かべた。
「いや……まあいいんだけど」
「ようわからんけどいいならいっか。A〜これうまい。すき」
「ほんと？やったね」
「また作ってや！食べに行きたい」
「いいよ〜今週末の夜でいい？」
比較的良くできた方であるしいたけの肉詰めを頬張りながら坂田は丸っこい目を細くして、次のリクエストにそれを選んだ。彼の好みの食材ばかりを使って正解だった。喜ぶ顔を無事見ることのできた私の気分は実に晴れやかだ。
小さい時から幾度となく繰り返してきたやり取りの中、それを数回目にしてきたうらたくんが、とうとう口を開いた。
「2人さぁ、本当に付き合ったりとかはしないの？」
私たちの動きが一瞬だけ、止まった。これこそ数え切れないほど言われてきた言葉である。時にはからかい口調で、時には呆れたように、そして時には今みたいに心底不思議そうな顔とセットで。
食べていた物を急いで飲み込んだらしい坂田はそのよく通る声でこう叫んだ。
「っ、しないわ！！するわけないやん！！」
あぁ、焦っているせいで顔が真っ赤だ。わかりやすすぎるでしょ、いくらなんでも。
じんわり汗ばんでいる彼のこめかみから目を逸らす。
「そうだよ。ただの幼馴染だもん」
そう続いた私の、真っ白に変色した指先のせいでお弁当箱が小さく軋む音がした。
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作者名：作者一同 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月29日 22時
