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一度、見たことがある。
あの狸爺が、今はもう無くした左手で描いた絵。
ぼんやりとしか覚えていないあの絵は、何処に消えたのだっけ。
***
「なぁおっちゃん、此処未成年が入って良い所なの?」
「駄目だな」
「え??じゃ戻ろ、ね。戻ろう。入り口で合言葉とか俺知らない。言えなかったらボコボコにされてごみ捨て場に捨てられるやつじゃん。俺映画で見た。ねぇ、戻ろ」
「未成年が入って良い場所かどうかと未成年が入れるかどうかは別もんだろ。」
「なに???なんで急に難しいこと言うの???この前まで酒で呑んだくれて『おらぁ実は妖精なんだよな』って言ってたじゃん???あの頃のおっちゃんは何処言ったの??戻ってカムバック」
「おらぁ実は妖精なんだよな」
「やだむりねぇ。ね、もどろ」
「しっかたねぇなぁ…じゃあ俺が行くからお前は待ってろ。まぁ生きて戻れるかはわからねぇが」
「ハ??無理、こんな所で一人なの無理だって。俺慣れてないから。ねぇ置いてかないでよ」
「じゃあコンビニ行ってリプトンでも飲んでろ」
「無理だっつってんだろこの糞狸」
「客とか店員さんが居るぞ」
「他人じゃん!!おっちゃんが行くなら着いてくからせめてもちっとゆっくり歩こ!!ね!?」
「くせぇだろ。平気か」
「アルコール…と生ゴミと内臓と血の匂いする…」
「こんなところでハミングの香りしても困るだろ。…坊っちゃん、フード被れ」
「え??なんで???」
「なんの為にフード付きの服着させたと思ってる」
「…そっちの方が可愛いから…?」
「そうだな。可愛いからフード被って下向いて黙ってろ」
「その心は???」
「お前さんの色素だと悪目立ちする」
「色差別じゃん…」
「地髪が青系統で金に近い瞳のガキは見栄えが良いんだよ。高く売れるぜ?」
「俺実は床大好きなんだよね」
「ン」
持たされたバールをぎゅ、と握る。
狸爺と同じ位金払いの良い店。イコール狸爺が貰った宝石を売って金を受け取り、売った奴に金を渡す。その課程の宝石を売る所。なんで気付かないかなぁ。ちょうど八徹目なんだ頭回んねぇんだよクソ。
『フード付きの服貸してやる。あとこのバール持っとけ。』
『出掛けるだけでバール持ち歩かなきゃいけない所なの?ねぇおっちゃん』
『安心しろ宝石は守ってやる』
『俺さ、勘違いされてるから言うけど命を守って欲しいんだよね。』
「おい坊っちゃん、来な」
「ッハーーー無理。何もかも無理。おっちゃんバールかなんか持ってる?」
「手、手」
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