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21.妙案【シモン・テラー/41】 ページ21

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 共有スペースの近くまで行くと何やら人が集まっている。どうやら自分達が移動した後に案内が入ったようだ。なんと間の悪い。双子の少女に礼を言って別れ、説明が始まったようで耳を澄まし聞き取る。スタディルーム、なるほど安直な名前だ。さしずめここが教室代わりになる部屋だろうか。ただ、その次の『明日から文化祭の用意を始める』という発言には驚いた。

「いくら何でも急すぎないか…?いや、これが普通なのか…?」

 普通の基準が分からないが、少なくとも入学して直後に文化祭とは思わなかった。まだ自己紹介すらしていないのに…と心の底で思いながら話を聞く。今日は寮に行き、同性同士で交流するそうで。
 それよりもシモンはこれから先の身の振り方の心配のほうが強かった。迂闊なことを言ってしまうわけにはいかないし、ましてや異端ということは言えやしない。そもそも人類族が割合的に少ないのに、いきなり他種族と仲良くできるかと言われれば疑問が生じる。
 …ふと頭に妙案が浮かぶ。なら、そう深くまで仲良くならなくてもいいのでは(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)?自分なんかと仲良くなっても良いことは無いし、それならば自分はまわりが仲良くなるように手助けする、サポートに回ろうかと。そもそもこれは希望族と絶望族、人類族の和解のために作られた学園だ。自分はそれを手助けし、他の生徒の和解の橋渡しになる。自身はまあ…ある程度他と協調性が保てていればいい。ああ、それがいい!

 そんなことを考えながら、人の流れに乗り寮の自室へと移動する。一人一部屋、なんとも豪華だ。少なくともシモンの記憶には部屋=最低三人以上と同室といった記憶しかないので一人部屋という環境が非常に快適に感じた。
 寝巻の棚を見ると上下に分かれた薄紫色のパジャマ。手触りが良く、パジャマにしてはもったいなくないか…?と普段ボロのTシャツで寝ている自分との意識の違いが映し出されたような気分になった。

「ここが俺の部屋、自分だけの部屋かあ…ここから、新しい生活が始まって行くのか」

 なんて独り言ちながらベッドに腰かけると外からリリィの『――男子もちゃんと、男子会するんだよ!』という声をが聞こえてくる。なるほど、それならばととりあえず男子会で話す内容を考え始める。まず自己紹介、年齢、学園に来る前は何をしていたか…は自分が答えるのに困るからナシで、と張り切って内容を練っているうちに夜は更けていった。


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白花桜 - 更新しましたー (2020年6月7日 21時) (レス) id: 2fb229e0ec (このIDを非表示/違反報告)
白花桜 - 更新しまーす (2020年6月7日 20時) (レス) id: 2fb229e0ec (このIDを非表示/違反報告)
茶々(ピンク)(プロフ) - 更新しました! (2020年6月6日 14時) (レス) id: 52271b36b8 (このIDを非表示/違反報告)
茶々(ピンク)(プロフ) - 更新します……! (2020年6月6日 14時) (レス) id: 52271b36b8 (このIDを非表示/違反報告)
時計(プロフ) - 更新しました! (2020年6月6日 14時) (レス) id: 242ac85fef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:響@雫3318 x他6人 | 作者ホームページ:無い。  
作成日時:2020年5月25日 12時

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