今世は悪役になりませんように

木と馬 ページ15

訓練祭も後一週間に近づいてきた今日この頃


全員の雰囲気がピリピリと引き締まっている


部屋の者以外全員敵なのだから仕方がないのだろうが


どうも居心地が悪くて庭のある木の下に身を置く


此処はとても気持ちが良い


木洩れ日が適度に当たり、風は涼しくて気持ちが良い


風によって揺らされた葉が奏でる音に耳を澄ませる


最悪だった気持ちは一瞬で癒される


木に触れれば懐かしい思いが心を埋める


私は、この木を知っている？


目を閉じて頭を回転させれば、近くで足音が聞こえた


うっすらと目を開ければ、黒い毛並みに琥珀色の瞳の馬が居た


近づいてくる馬に、不思議と恐怖はなく目の前に来た馬の頭を撫でる


馬は気持ち良さそうに手に擦りよってきた


「......オルティス」


気づけば自然と何かの名前が口から溢れた


いや、何か。ではないな。この名前はこの馬の名前か


知らない筈なのに、知っている


不思議な感覚に首を傾げれば、オルティスはもっと触れと言うように私の頬に自分の頬を擦り付ける


ht「オルティスー！！何処に行ったのー！！」


遠くの方から声がどんどんと近づいてくる


よく見ればひとらんらん幹部様だった


ht「居た！！オルティス、何でここに.....って、君は？」


オルティスによって隠されていた私に気がついたひとらんらん幹部様は目を見開く


ht「お茶会に居た新兵だよね？でも、何でオルティスを触れるんだ......？」


覚えていてくれたようだ


オルティスに触れることに驚いていたようだが


「オルティス、ひとらんらん幹部様に迷惑を掛けるな」


そう注意すればオルティスはショボくれたようだ


首を下に下げていた


ht「えっ？オルティスに命令出来るのはあの方以外出来ないのに.....！？」


オルティスの頭を撫でてやればブンブンと尻尾は揺れていた


動物は癒されるな


ht「凄いね、君.......オルティスもなついているみたいだし」


ひとらんらん幹部様は驚いたように、だけど安堵のため息を溢していた


ht「あっ、時間が迫ってきてるからオルティス。着いておいで」


ひとらんらん幹部様がそう言っても嫌々と逃げるように動いているオルティス


「オルティス、また時間があれば遊ぼう。な？」


そう言えばオルティスはパッと頭を上に上げて急にひとらんらん幹部様を引っ張る


服伸びそうだな


別れを言えばひとらんらん幹部様は笑顔でオルティスを連れていった

訓練祭開会→←図書館

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す