検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:2,248 hit

ページ2

「…もう寝る。」

義勇は吐き捨てるように言うと、蝶屋敷の寝台に潜り込んだ。

アオイは悲しそうに義勇を見つめた。

しかし、やがて諦めたように黙って部屋を出た。

途端に義勇は、罪悪感に襲われる。

あんな言い方、するんじゃなかった。

(アオイには、面倒をかけてばかりだ…)

義勇は深々とため息をつき、瞼を閉じた。


「冨岡さん、こんばんは。」

義勇がハッと目を開けば、そこには今は亡き同僚の姿。

「今夜は月が綺麗ですねぇ。」

「胡蝶ッ!お前、生きてッ…!」

義勇は言いかけて、口を噤んだ。

彼女は、死んだ。

これは、ただの夢だ。

しのぶは、義勇の言おうとしたことを察して、悲しげに微笑んだ。

「ごめんなさい―――」

「謝るくらいなら、あんな死に方するんじゃない!残された方が辛いだけだろう!」

しのぶは一瞬目を見開き、そして言った。

「あら、今日は嫌に饒舌なんですね。
 でも、私、後悔はしていません。やっと姉の仇が取れましたし、蝶屋敷はアオイたちに任せてれば何も心配ありませんから。」

義勇はやりきれなくなって、顔をそむけた。

「そんなこと言うな。あの子らが、お前をどれ程慕っていたことか。もっと胡蝶と共に居たいと思っていたはずだ。」

それに。

義勇は心の中で付け加える。

それに俺だって、もっとお前と一緒に過ごしたかった。

出来る事なら、鬼のいない平和な世界で、胡蝶の笑顔を見ていたかった。

「冨岡さん、いつまでも下を向いていてはだめですよ。アオイたちみたいに、前を向いて。」

しのぶは言った。

その声は、心なしか震えているようで。

「しっかり生きて下さいね、義勇さん(・・・・)。私たちの分まで。幸せになってください。約束ですよ?」

しのぶの姿は、みるみるうちに薄れていった。

弐→←プロローグ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.0/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , ぎゆしの , 胡蝶蘭
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ピ奈 - 胡蝶蘭の花言葉初めて知った...お葬式や卒業式に胡蝶蘭が飾ってあるのを見てきたので「祝う」とかそういう意味だと思ってました...卒業式に「あなたを愛しています」とかは愛されてた感じがして泣けてきますね、お葬式でも...花言葉って素晴らしい! (2021年3月26日 1時) (レス) id: b2cfaa4137 (このIDを非表示/違反報告)
凛花 - 悲しい...。 (2020年8月6日 21時) (レス) id: e8c0aaebea (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あおいつばめ | 作成日時:2020年7月17日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。