一人と一振 ページ10
sideA
試合を負けて一期がゲートから出てくる
『お疲れ』
労ってやろうと思って出迎えれば
一期は俺の方へと倒れてきた
『!?』
慌てて倒れて込んできた身体を支えてやれば
俺の肩で一期の空色の髪が揺れる
「申し訳ありません..少し..目眩が..」
『..』
先程の試合が響いたのか?
そう思ったが、俺は即座にその考えを切り捨てた
『...次の試合まで時間がある...用意された休憩室で休むか』
「はい..」
力なく答えた一期を連れて
俺は足早に休憩室へと向かった
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休憩室に到着し、一期をソファに横たえてやる
「...すみません..」
目元を抑えて謝罪を述べた一期の顔色は悪かった
...完っ全に失念していた..
演練なんて..そもそも来るべきじゃなかったんだ
今回、一期は俺の沽券云々で演練に来た
此奴は一度も自分から来たいとは言わなかった
「主殿」
手拭いを濡らそうと備え付けの水道に行こうとしたら、腕を掴まれた。何かと思って振り返れば一期が気だるそうに俺を見ていた
『無理させちまったな..残りの試合、出たくないなら出なくても大丈夫だ』
「貴方の沽券を、潰す訳には..いきません」
『沽券より...お上の評価より、俺にとったらお前の方が大切だ』
「...!」
『...怖いんだろ』
刀剣男士が怖いんだろ
そう言えば、一期は驚いた様に目を見開いた
『お前の異変に気付かない訳ないだろ..試合前はポーカーフェイスで隠してたんだろうが、試合中に崩れたな......お前は、刀剣男士が怖い...違うか、一期』
「怖くなど..!」
『なら怖くはないがマイナスな感情を抱いてるな。行動からしてそうだ。何時ものお前らしからぬ戦い方だった』
指示を出したのは俺だが
それでも此奴の刀の振り方は何時もと違った
「...違う...私が怖いのは刀剣男士ではない」
上半身だけを起こし俺を見据える一期の瞳は
動揺し、微かに揺れていた
俺を掴む手の力も心做しか強くなっている
「私が..恐ろしいのは...」
『...うん』
「...恐ろしい..の、は..」
そこから先が言い出せないのか、一期は口を開けたり閉じたりを繰り返し、しばらくすると俺から手を離し起こしていた上半身をソファに倒れ込ませた
「..主殿は私が恐ろしいとは思わないのですか」
『思わないね』
突然の問いかけにほぼ反射的に答えれば、一期はまるで安堵したかの様に柔らかい笑を浮かべた
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風船ガム - オムライスさん» 有難うございます!一期一振、良いですよね。普段とは少し違った一期一振ですが、どうかお楽しみ下さい! (2019年9月19日 21時) (レス) id: 96bda523c0 (このIDを非表示/違反報告)
オムライス(プロフ) - とても面白いです!一期さん推しなのでとても嬉しいです!更新楽しみにしています! (2019年9月19日 0時) (レス) id: 8c1b28c023 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風船ガム | 作成日時:2019年9月16日 12時