大倉くんのヒロインにはなれない。 (ページ31)

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31.助け舟と槍ページ31

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結局、武田くんのことは丁寧に断った。
でも人生初の告白は、本当に嬉しかった。

一「心配させてごめんなあ」

「よかったよ、元気になって」

一「まー代わりに忠義が寝込んだけどな」
一「私のが綺麗にうつったわ(笑)」

大倉くんが…風邪。一花ちゃんの風邪がうつる程のことを、したんだ。

こんな事をすぐ考えてしまう。

それから3日後くらいで、大倉くんは戻ってきたんだけど、顔見れなくて。勝手に一花ちゃんとのあれこれを、私がその3日間想像したからなんだけど。

大『おはよ、A』

「おはよう、」

大倉くんはいつもと変わらない。私は毎日、日を追うごとに変わっていく。一花ちゃんから大倉くんの話を聞くたびに。

一「忠義な！わたしが付きっきりで看病したってんのに全然可愛くなかってん」

「ええ〜？どうゆう事？」

一「言うことは聞かんしわがまま言うし、いきなりチューするし」

大『喜んでたやん』

一「はっ？ぶり返すやん。てかそれで忠義うつったやん、」

毎日少しずつ、壊れては自分で直して。
耳を塞ぎたくなるような衝動を必死に抑えて。
やっぱり、武田くんの告白を受ければ良かった。

一「なぁ次のデートどこにしたらいいと思う？」

「え、私が決めていいの？」

一「Aに決めて欲しい！」

「一花ちゃんと大倉くんなら、そうだなぁっ」

頭が回らない。もう回らないの。

一「A…？」

「ごめん一花ちゃんっ…、ちょっとしんどくて、」

一「気付かんくてごめん、大丈夫…？」

上手くやらなきゃ、上手くやらなきゃと思えば思うほどに壊れていく音がする。

大『ほんまに大丈夫？』

嫌いになれたらいいのに。このまま嫌いになれたら。

安『保健室連れてこかー？』

ベストタイミングで教室に入ってきた安田くんは、私の手を引いて『行こっか』と言ってくれて、教室から…2人から逃がしてくれた。

安『Aちゃん。ごめんな』

「え、？」

安『俺だけ楽してもうた』

「安田くん…？」

安田くんは目に涙を貯めて

安『Aちゃんの気持ち知ってて、2人のとこに置き去りにしたっ…』

「やすだ、くん…」

安『でもごめん…っ一花のために、大倉は諦めてっ』

安田くんの言葉は鋭い槍で、私の胸を貫く。安田くんに言われて頷く以外の事ができるなら、誰か教えて。誰か、助けて。