大倉くんのヒロインにはなれない。 (ページ22)

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22.私の涙は綿あめのようにページ22

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横山先輩が職員室まで一緒に運んでくれて

横『帰るやろ？』

「はい。…あれ、、」

横『どしたん？』

校門に向かってる最中、スマホが無いことに気付いた。

「…うそ…」

教室だ。

でも…今戻ったら…2人に鉢合わせるかも…。
っでもやっぱりスマホはいるし置いて帰れない。

「スマホ教室に置いてきちゃったみたいなので、取ってきていいですか？」

横『わかった。待ってるわここで』

「ありがとうございます！」

大丈夫…。絶対鉢合わせない。
大丈夫。すぐ取ってすぐ帰ればいい。

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わざわざ走って教室まで来た。

なのに自分の教室から聞こえてきたのは

一「何言うてんのっ？今更」

大『一花がどう思ってんのか聞きたいだけ』

一「っ、」

大『ヤスが好きなんやんな…？』

ドックン、と胸の奥が低く弾かれた。
全身の力が抜けそうになるくらいの。

大『答えて、一花…』

一「…なんで…？なんで今なんっ？」

大『ヤスが好きって、言うてやっ』

だめ。
動けない。

引き返して、横山先輩が待ってるとこへ行けばいいのに、足が動かない。

一「章大が、好き。」

大『俺の目見てゆって…』

一「っ、、無理やって」

大『なんで無理なん？』

一花ちゃんが教室の窓際に背をついて
大倉くんが一花ちゃんの腕を掴んでて

一「忠義が…………好き」

大『……』

そのまま、2人は

私の目の前でキスをした。

かろうじて、その光景を見てすぐに
やっと脳からの指令を受けた足が方向転換をした。

「はっ、」

心拍が上がり続けてるせいで呼吸が乱れてく。
教室のドアに身を隠して、必死に声が漏れないよう
手で口を押えた。

安『っ……』

向かい側のドアのとこで、私と同じ光景を見て声を押し殺して泣く安田くんがいた。

いつだって…本当に私が泣きたい時には
私よりも辛い人が横にいて、わたしの涙なんて
その人達からしてみれば…綿あめみたいに
甘すぎて軽すぎて。泣けないんだ。

泣けるはずがないのに

それなのに、涙がいくつも、いくつも。落ちる。

横『…もう、何も見んでいい…』

横山先輩の声がして、顔を上げると
すぐ目を手で覆われて
ギュ…と初めての温もりが私を包んだ。