百八話 ページ11
「嘘……やろ」
尻もちをついたまま侑の口からそうこぼれる。
乾いた笑いしか出てこない治も尻もちをついたままナイフをポトリと落とした。
「あら、もう終わりかしら。
私まだ一度しかナイフを振っていないのだけれど」
そう言って笑うAに周りは思う。
あぁ、この人には一生勝てないな。
「二人はまるでメトロノームね。
不規則に見えるナイフだって、テンポが同じ二人はいつかは同じタイミングで同じ場所にナイフを振っていた。
特に衛輔が後ろに立ったとき、二人とも同じことを考え、一瞬ナイフを持ってくる動きが単調になった。
そこはナイフが同じタイミングで振られるところでもあった。
あとはそのナイフを受けたように見せて力を抜けばナイフを振っていた勢いで二人は勝手に倒れる。
後ろから来る衛輔は速さはあれど威力が無いから私でも片手で受けられることは分かっていたし、殺気を出すタイミングが少し早かった。
そのくらいかしら」
それから全員風呂へ強制送還。
動かなかった太一と英汰はダイニングで待機していた。
「あの、瀬見さん」
「どーした？」
「なんであのとき嘘をついたんですか？」
「嘘？」
『近接戦あんまり得意じゃないしな』
「あぁ、あれ」
「俺、知ってますよ。
白布に近接戦仕込んだのも瀬見さんですよね」
「ちょっと見てやってただけだよ」
「白布の前は瀬見さんが牛島さんと組んでたことも、戦闘スタイルは違えど実力は瀬見さんのほうが上だということも」
「……俺は今はスナイパーだ。
それに立ち回りはあいつのほうが上手い」
「っそうじゃなくて、」
「俺がそうしたくてしたんだ。
若利たちも了承してる。
それに今の立場に不満もない」
「だから、」
「なにも違わない。
もうこの話はいいか？ちょっと俺部屋に戻るから」
「瀬見さっ＿＿＿」
笑えてないですよ。
その言葉は出ることなく、小さくなっていく背中を太一は見つめたままだった。
それから騒がしい様子の衛輔に揺らされるまで太一はぼーっとしていた。
「おい、Aはどこに行った！？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 668人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナノハナ - 初コメ失礼します！これめっちゃ面白いです！！応援してます！！ (3月29日 10時) (
レス) @page43 id: 137f80559f (このIDを非表示/違反報告)
ふみっこ(プロフ) - 久しぶりですね。これからも応援しています (3月24日 1時) (レス) id: 2dbc59a763 (このIDを非表示/違反報告)
もずきむ(プロフ) - 久しぶりの更新とてもうれしいです！お体に気をつけて過ごしてくださいね！応援しています！ (2022年7月9日 16時) (レス) @page23 id: b697353442 (このIDを非表示/違反報告)
桜の穂 - めちゃくちゃ面白いです!!更新待ってます!! (2022年7月9日 14時) (レス) @page23 id: f612835adc (このIDを非表示/違反報告)
玲音(プロフ) - 面白いです、！！！こんな素敵な作品思いつくなんて天才かなにかですか、？？更新頑張って下さい！！！！ (2022年7月8日 6時) (レス) id: 476ecc0356 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：時間 一日（ときま いちじつ） | 作成日時：2020年5月5日 14時
