海に出て愛される【ONE PIECE】 (ページ34)

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肩に持たれかかり小さく寝息をたてる女。

会ってまだ数時間といったところだがどうやら随分好意的なようだ。

一般人にしては随分場慣れした様子もまた異様であった。

海賊だと正体を明かしても、少しビビらせようと脅かしても、なおこちらに笑いかける不思議なやつ。

そんな人懐っこいAに絆されたのかクルーたちもすぐ仲良さげに談笑していた。

恩人。

その一言で一瞬にして女の言葉がクリアに聞こえるようになった。

この世には似たような境遇のやつなんてごまんといる。

しかしその女の恩人とやらに対しての想いが、必死さがローの脳裏に焼き付き、何かを突き動かしたのだった。

普通なら赤の他人を船に乗せるなんて絶対にしないし、そもそも面倒くさがって対話すらろくにしなかっただろう。

気の迷いか、はたまた必然かは分からないがただ横で無防備に寝顔を晒すその女を呼び止めたのは紛れもなくロー自身であった。

「…ったく風邪引いて島に降りれねぇなんて言うなよ」

舌打ち混じりのため息をかまし、Aを両手で抱え上げる。

そのままゆっくりと中へ入っていき、床で転がっているベポの脇あたりに女をそっとおろした。

「……んぅ？キャプテン……？」

「起こしたか？ベポ」

「ううん、大丈夫」

「こいつを風邪引かないようにしてやれ」

「アイアイ。

キャプテンは寝ないの？」

「次の見張り叩き起こして寝る」

「じゃあキャプテンもあとでこっちおいでよ。

たまにはいいでしょ？」

そんなベポの問いに答えることなくローはその場を立ち去った。