第7章 ページ8
「え、そう…？」
Aくんが指差している私が描いた薔薇は、私から見ると歪な形で、とてもそうには見えない。
「うん。すごく綺麗。なんていうんだろ…なんか、弱井さんの絵を見ると、この人は優しさに満ち溢れているなって感じもする」
そう言って、自分の絵のある方に戻った。もし、私がそんな優しさを感じさせる絵を描いているのだとしたら、Aくんは綺麗な心の持ち主かな、と思った。
それから、他愛も無い話をして、時計の針が12時のところにぴったりになると、Aくんは前髪を留めていたピンを外し、席を立った。
「僕、午後用事あるからここまでなんだけど、弱井さんはどうする？」
「じゃあ、私も…。ねえ、明日は？」
「明日もきっといるよ」
Aくんは「きっと」と言ったが、私には「必ずいる」と言っているように思った。楽しそうな表情をしていたから。
「じゃあ、明日もくるわ」
私がそう言うと、Aくんは笑顔で頷いた。
筆を水道水で洗って、座っていた席にパレットを置いた。
「じゃあね、弱井さん」
校門まで2人で出た。Aくんは、私の家の方向と真逆の方に体を向けて私に手を振った。
「ええ！また！」
Aくんが角に曲がって姿が見えなくなるまで、私はAくんを見送った。それまで、真夏の真っ昼間だというのに暑さなど忘れていた。
王子様のような顔をしていた男の子と一緒に美術室で絵を描いていた夢のような時間____から、Aくんが隣から姿を消して一気に現実に引き戻された。
そういえば今日は家にあの煩い六つ子達が遊びに来るとかなんとか言っていた…と思い出し、溜息が漏れる。
家に帰ると既に六つの顔が待っていた。
「トト子ちゃあーん！！待ってたよー！！」
第一声を発したのはおそ松くん。
久しぶりに見た六つ子達がお揃いに来ているそれぞれのイメージカラーのパーカー。
松代さん、年頃の息子達にこんなセンスの物を着させていていいのかしらと思うが、本人達が進んで着ているから特に気にはならないのだろう。
「お待たせ、皆」
「あれ、何で制服着てるの」
そう聞いて来たのはチョロ松くん。
「ああ…用事があったの」
「ふーん？」
家に上がると、昼食が既に用意されていた。
家の魚屋は大繁盛しているから、それなりに豪華な食事を食べていると思っているし、贅沢しているのはわかっている。それにしてもお母さん。
3日連続売れ残りの魚は辛いです。
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しずく@眠たがり(プロフ) - もう更新はされないのかな…？ (2019年2月7日 11時) (
レス) id: 2e94dfd782 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - 男主のトト子ちゃんのやつ、少ないから嬉しいです！めっちゃ面白いですね！！ (2017年10月10日 16時) (レス) id: 329393c0db (このIDを非表示/違反報告)
トト子ちゃんは天使 - トト子ちゃんの小説あまりにも無いのでこのような作品があり嬉しいです！！orz ありがとうございます更新楽しみにしております(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年2月3日 11時) (レス) id: 5025687234 (このIDを非表示/違反報告)
れおん。(プロフ) - 個人的には、六つ子のかで、一番好きです！（笑） だから、このような作品を作ってくださり、ありがとうございます！！ 自分自身も、書いているのですか、まったく続かず。その文才を是非わたしに！(^◇^;) 更新、頑張ってください！ すーっごく、応援してます！ (2016年2月3日 7時) (レス) id: 36f06c9cc6 (このIDを非表示/違反報告)
異脳 - トト子ちゃん可愛いですね！更新頑張ってください！ (2016年2月1日 23時) (レス) id: 6b1eec1aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜風 金魚 | 作成日時：2016年1月26日 21時
