第6章 ページ7
それからすぐ私は、課題の絵を片手に学校から出た。夏休み中はしばらく居ると言っていた。
たまに、遊びに行ってみようかな。
少し話しただけで、Aくんの人の良さが知れてまた話したいと思った。もしかして、私が今読んでいるあの本についても話してくれるかも。
胸に期待を膨らませて、また次の日すぐに行った。
朝の10時。真夏の美術室は熱気でむんわりとしていたけれど、回されている扇風機の音でこのむんわりとした空気が吹き飛ばされているのを想像したら、少し体感温度が下がったような気もした。
「おはよう」
緊張気味に発した声に、美術室の奥から人影が現れた。
「おはよ、弱井さん」
笑顔で迎えてくれた彼は、頬に青い絵の具をつけていた。それを指摘すると、シャツを肘まで捲り上げて露わになった腕で、恥ずかしそうに頬を擦った。
「今日は、私も課題を進めようと思って」
私は、そう言って脇に抱えていた絵をイーゼルに立てかけた。
とてもじゃないけれど、Aくんの隣になって描くのは才能の差がありすぎて抵抗があった。
だから、お互いの絵がギリギリ見えないような角度に座った。
「弱井さんのやつ、良い味出てるね」
暫くお互いに描いていて、カンバスに顔を向けたままのAくんがふと言い出した。この絵を、見られてた。気がつかないうちに。その羞恥心で、顔の熱が上がった。
「あっ、ごめん。集中してた？」
黙り込む私を気にかけて、Aくんがカンバスに向けていた顔を私の方に向けて問いかけてきた。
「ち、違うの。ただ…あんまりAくんが上手だから、褒められたのが恥ずかしくて…」
そう言うと、Aくんは「なんだあ」と笑顔を見せた。笑い続けるAくんを見てたら、なんだか此方側も可笑しく思えてきて、2人で笑いあった。
「弱井さんの絵が上手だと思ったから素直に褒めたまでだよ」
Aくんのその表情。御世辞という言葉を出すのには罪悪感の塊が心に積もる。
では本心で言ってくれているのかと思ってみると、ただそれは、才能のある人が、無い人に情けをかけてあげているだけなのではないかという思いにもなる。
「ありがとう…」
そう言った私に、Aくんは座っていた席から立ち上がって私の背後に回った。
鼻に触れた、ふんわりとした柔らかい匂い。
「だって、この花。生きている喜びを全身で表現しているように見える…」
私がカンバスに描いた、赤い薔薇を指差してAくんは言った。
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しずく@眠たがり(プロフ) - もう更新はされないのかな…？ (2019年2月7日 11時) (
レス) id: 2e94dfd782 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - 男主のトト子ちゃんのやつ、少ないから嬉しいです！めっちゃ面白いですね！！ (2017年10月10日 16時) (レス) id: 329393c0db (このIDを非表示/違反報告)
トト子ちゃんは天使 - トト子ちゃんの小説あまりにも無いのでこのような作品があり嬉しいです！！orz ありがとうございます更新楽しみにしております(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年2月3日 11時) (レス) id: 5025687234 (このIDを非表示/違反報告)
れおん。(プロフ) - 個人的には、六つ子のかで、一番好きです！（笑） だから、このような作品を作ってくださり、ありがとうございます！！ 自分自身も、書いているのですか、まったく続かず。その文才を是非わたしに！(^◇^;) 更新、頑張ってください！ すーっごく、応援してます！ (2016年2月3日 7時) (レス) id: 36f06c9cc6 (このIDを非表示/違反報告)
異脳 - トト子ちゃん可愛いですね！更新頑張ってください！ (2016年2月1日 23時) (レス) id: 6b1eec1aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜風 金魚 | 作成日時：2016年1月26日 21時
