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第12章 ページ13

「ねえ、Aって、」

帰路を歩く私の横を金魚の糞のように付いてくるおそ松くん。さすがに私も、堪忍袋の尾が切れた。


「はあ、いい加減察しなさいよね。
貴方達が話していた花江Aくん。」

そう言うとおそ松くんは、「えっ」と声を上げて、何かを考えるように目線を泳がせる。

「あぁ!?あれが!???」

思い出したように大声を張り上げるおそ松くん。
どうやらトド松くんの話を思い出したようだった。

「だって、前髪がめっちゃ長くて、暗くて…みたいな、そんな雰囲気あった!?」

「ないわよ、全然ない。トド松くんが言っていたのはオーバーすぎたのよ」

「いや、オーバーもなにも…」

「ひょろっ子っていうとこしか合ってねーよ…」とブツブツと何かを言い出すおそ松くんに気を止めずに歩いていると、我が家の前に着いた。

「じゃあねおそ松くん。」

「あっ!あっ!!じゃあ…」

どうやら私の家に着いたことに気がつかずに歩いていたようで、曖昧なサヨナラをした。

バタンとドアを閉めるときに見えたのは何とも言えない間抜けな顔。

自分達が貶していた人があんな素敵な外見の人だったなんて、驚いたのかなと思った。
下剋上とはこういう事を言うのかもしれない。



それから、日曜日になった。


7月が終わりそうなこの頃、私は遊ぶ相手も居ずに1人街を歩いていた。

少し歩けば、カフェや小店が並び、ショッピングモールも並ぶこの街は嫌いではない。

クラスメイトが美味しいと騒いでいた珈琲屋さんのフラペチーノを片手に、病院が向かいにあるアクセサリーショップを通りかかった時。


それなりに大きな病院の自動ドアから、見覚えのある人が出てきた。

Aくん。


シンプルだけどお洒落な私服で、前髪は絵を描く時のように横に流してピンで留めている。
いつもとは違う雰囲気をしていて、そんな姿を見れた私は少し嬉しくなった。

Aくんは、私に気がつかずに小さな紙を片手に浮かない表情でその紙を見つめていた。

「どうしたのかな…」

私の口からぽそりと零れた独り言は、いつかのように空気に溶けて、消えた。

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しずく@眠たがり(プロフ) - もう更新はされないのかな…? (2019年2月7日 11時) (レス) id: 2e94dfd782 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - 男主のトト子ちゃんのやつ、少ないから嬉しいです!めっちゃ面白いですね!! (2017年10月10日 16時) (レス) id: 329393c0db (このIDを非表示/違反報告)
トト子ちゃんは天使 - トト子ちゃんの小説あまりにも無いのでこのような作品があり嬉しいです!!orz ありがとうございます更新楽しみにしております(((o(*゚▽゚*)o))) (2016年2月3日 11時) (レス) id: 5025687234 (このIDを非表示/違反報告)
れおん。(プロフ) - 個人的には、六つ子のかで、一番好きです!(笑) だから、このような作品を作ってくださり、ありがとうございます!! 自分自身も、書いているのですか、まったく続かず。その文才を是非わたしに!(^◇^;) 更新、頑張ってください! すーっごく、応援してます! (2016年2月3日 7時) (レス) id: 36f06c9cc6 (このIDを非表示/違反報告)
異脳 - トト子ちゃん可愛いですね!更新頑張ってください! (2016年2月1日 23時) (レス) id: 6b1eec1aff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜風 金魚 | 作成日時:2016年1月26日 21時

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