第10章 ページ11
「私は今日中には終わらなそう」
描き続けている課題の絵を仕上げてきたが、一向に終わる気がしない。むしろこだわりが出てきて、一生描き続けていかないと終わらなそうだと…それは、大袈裟ね。
「良ければ、僕はもうすぐ終わるけど、弱井さんが来るっていうならこれからも来るよ」
えっ、と声を上げて振り返る。
Aくんが、私のために来てくれる？そう思うと、なんだか胸の底から嬉しくなった。
「いいの？」
「もちろん」
「じゃあ…」
その先は言わなくてもわかっているというように、Aくんは何時もの明るい笑顔で頷いた。
「僕も新しく絵を考えようかな」
そう言ってピッと筆を止めると、Aくんは席から立って遠くから絵を眺めた。
「うん、これでよし」
小さくそう言うと、死角になって見えていなかったAくんの絵を、Aくんは私の方に向かせてくれた。
「どう？」
「…すごく、綺麗」
なんて鮮やかで美しい。初めてAくんを見たときはこんな大きな才能がある人だなんて思っていなかったのに。
そういえば、私以外にAくんが凄く絵が上手いということを知っている人はいるのだろうか。
いなかったら…それは、2人だけの秘密といったような感じで、意味もなく恥ずかしくなった。
「あ、そろそろ」
Aくんが時計を見て呟いた。私も吊られて時計を見ると、時計の針は11:55を指している。
「そろそろ終わりにしよ」
そう言ってAくんは使っていたパレットと蓋を洗い始めた。
私も隣になって、赤い絵の具をパレットと筆から洗い落とした。
「それじゃあまた…いつかな？」
昨日のように、校門で別れを切り出すAくん。
「え、えと…」
悩む私に、Aくんは「あっ」と声を出した。
「ごめん、今週中はもう無理なんだ。来週の月曜日、どうかな？」
今日は木曜日。
「わかったわ。じゃあ、次の月曜日にまた」
「うん、僕も新しく絵考えなきゃね」
「何にしよう」と目をキラキラさせながら、顎に手を当てて考える仕草をするAくんは、幼く見えて、可愛らしくて、尊く感じられた。
「それじゃあ！」
Aくんが、私に手を振れば私も手を振り返す。
また昨日のように、Aくんが角に曲がって姿を消すまで見送っていた。
「あれ、今の____…だれ？」
背後から近づく影に気付かずに。
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しずく@眠たがり(プロフ) - もう更新はされないのかな…？ (2019年2月7日 11時) (
レス) id: 2e94dfd782 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - 男主のトト子ちゃんのやつ、少ないから嬉しいです！めっちゃ面白いですね！！ (2017年10月10日 16時) (レス) id: 329393c0db (このIDを非表示/違反報告)
トト子ちゃんは天使 - トト子ちゃんの小説あまりにも無いのでこのような作品があり嬉しいです！！orz ありがとうございます更新楽しみにしております(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2016年2月3日 11時) (レス) id: 5025687234 (このIDを非表示/違反報告)
れおん。(プロフ) - 個人的には、六つ子のかで、一番好きです！（笑） だから、このような作品を作ってくださり、ありがとうございます！！ 自分自身も、書いているのですか、まったく続かず。その文才を是非わたしに！(^◇^;) 更新、頑張ってください！ すーっごく、応援してます！ (2016年2月3日 7時) (レス) id: 36f06c9cc6 (このIDを非表示/違反報告)
異脳 - トト子ちゃん可愛いですね！更新頑張ってください！ (2016年2月1日 23時) (レス) id: 6b1eec1aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜風 金魚 | 作成日時：2016年1月26日 21時
