6:benefactor ページ7
大人しくついていった先は、うずまきという名前の喫茶店だった。
その男性に促され、隅の方の席につく。
「そうだ、何か頼まないかい?奢るよ。」
「結構です。」
そう言われたけど、断った。
こんなに怪しい人に借りなんて作ってたまるか。
黙っていると、また話しかけられる。
「ああ、自己紹介がまだだったね。私の名は太宰、太宰治だ。」
「...相枝A、です。」
「ふふ、Aちゃんね、よろしく。
じゃあさっそく本題に入るね。
Aちゃん、異能力使ったよね?」
私は答えないでただ睨んでいると、太宰さんは困ったように眉を下げた。
「うーん、仮にも恩人にその態度はどうかと思うのだけれど?」
「どういうことですか?」
その言い方だと、私は太宰さんに助けてもらったように聞こえる。心当たりは全く無いけど。
「10年前のこと、覚えてるよね?」
は?
「なんの、事ですか?」
なんとか絞り出した言葉は、とても弱々しかった。
いや、”あのこと”と決まったわけじゃない。
別のことかもしれないし______
「君の異能力が暴走した事件のことさ。まさか、覚えてないとでも?」
すがっていた僅かな希望がなくなったのがわかった。
・・・
消したはずなのに、なんで知ってるんだよ。
何もんだよ、こいつ。
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作者名:アイスクリスタル | 作成日時:2023年7月14日 21時