僕は君に2度恋をする【Hayato.K】 (ページ29)

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僕が知っている彼女はよく泣いていた。

出会った日もそう、

泣き腫らした目で僕を見つめた。

僕が''また明日''と言ったあの日も

初めてキスをした日も、そして今も。

彼女はいつも頬を濡らしていた。

1年ぶりに見た彼女は髪の毛が少し伸びていた。

最後に会った日より痩せていて

元々細かった身体が更に華奢になっているのが

沢山着込んだ服の上からでも分かった。

僕は彼女のことを想い過ぎて

幻覚まで見えるようになってしまったのだろうか。

頭のどこかで一瞬だけそんな風に考えたけれど

｢Aちゃん…っ、｣

無意識に僕の口から漏れたその声に、

驚いた顔で振り向く彼女と目が合えば

それはもう、幻覚なんかで片付けられるほど

安易なものではなかった。

『はや、と、さん…』

静かな波音の中で

大きな瞳を揺らした彼女が、

僕の名前を呼んだ。

もう、涙で崩れた顔なんて気にならなかった。

流し切ったつもりの涙が、再び僕の頬を伝った。

滲む視界から彼女を見失わないように

必死で目を擦って前を向いた。

｢Aちゃんっ！！！｣

嗚咽が交じる枯れた声で

精一杯の声で彼女の名前を呼んだ。

彼女が一瞬、顔を歪めたのを

僕は見逃さなかった。

｢戻ってきて、、っ｣

目の前の彼女に伝えたいことなんて

この1年で沢山考えたはずだったのに

それが何も浮かばなくて頭の中は真っ白で。

今日で最後、とさっきまで

必死にしがみついていた綺麗事は、

いつの間にかどこかへ飛んでいってしまって

僕の心の奥底にずっと

深く潜んでいた本当の気持ちが

口から止め処なく溢れた。

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