ケモノなWESTにご注意を【3】 (ページ7)

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あの時ページ7

桐山照史side

神ちゃんのギターの音が壁を伝って聞こえてくる。

上手なその音楽を掻き消すように突然聞こえた淳太くんの大きな声。

今日はお客さんが来るから部屋に入っとくように言われとったけど、なんで淳太くんの声が…。

照「！まさか！？」

俺は慌てて部屋を飛び出して、客間へと向かう。

淳「おかん！俺は嫌や！！」

「貴方の意見は聞いていないし、これはもう決まった事なの。明日の夕方に迎えの車をよこすから、荷物をまとめなさい。」

嫌やって言うとるやんって淳太くんが必死に抗議しとるのをまるで見えないかのように素通りして玄関のドアを開ける女の人。

重「ん？あれ？」

気が付くと、重も淳太くんが気になったんかひょこっと顔を出して淳太くんの方を見ていた。

重は首を傾げながら、淳太くんを横切って淳太くんのお母さんの後を追って庭へ出て行った。

淳太くんの背中はほんまに弱々しくって、どう声をかければええんか分からんかった。

そこに流星が丁度病院から帰って、Aを見るなり抱きしめた。

その面持ちは、ぱっと見は無表情なんやけど少し険しい感じがした。

…何があったんや？

淳太くんは何を嫌がっとったん？

流星はそれを知っとるん？

色んな疑問が頭を駆け巡って、ほらまたあたりめを取り出す手が止まらんねん。

頭がキャパオーバーするといっつもこれや。

淳「もうええよ。そんな顔せんといてや、A。俺、めっちゃ嬉しかったんやで？俺は誰のものでもないって、俺自身のものやって言ってくれた時、ほんまに救われたんや。」

淳太くんの弱々しい背中がAの方へと近づいて、無理に笑おうとしとるんが、顔を見んでも分かる。

あ「でも、私のせいで…。」

首を横に振って、流星の腕の中から出てくるAに淳太くんは優しく頭を撫でた。

淳「…ええんや。明日でさよならや。」

あ「！…ごめん、淳太くん。」

辛そうに顔を歪めるAと淳太くんの言葉に、やっと状況が分かってきた。

…淳太くん、退院するんや。

しかも無理やりって事か。

自分の腕の中から出ていったAをしばらく見つめると、部屋に戻るんか歩き出した流星。

その瞳はゆらりと揺れながら妖しく光っていた。

それは、Aが酔ったあの時の目と同じやった。

Aはそれに気付かず、淳太くんと話を続けていた。