ケモノなWESTにご注意を【3】 (ページ3)

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瞬間ページ3

貴方side

ピンポン

チャイムが鳴って、淳太くんはビクッと体を強張らせた。

どんどん弱っていく淳太くんの頭をそっと撫でると、私は玄関へ向かった。

あ「はい！どうぞ、お入り下さい。」

ドアを開けると、なんというかいかにもお金持ちの奥様って感じの格好の淳太くんのお母さんが立っていた。

ツンとした態度で私を見ると、何も言わずにコツコツとヒールを鳴らして中に入っていった。

…この人が、淳太くんのお母さんかぁ。

確かに気難しいというか、プライドが高そうな人だなぁって印象はあるけど…。

淳「お、おかん。久しぶり…。」

ぎこちなく微笑む淳太くんには目もくれず、用意した客間のソファーに座るお母さん。

「これ、入院期間の変更に伴って請求書の期限について話したいのだけど、先生はいらっしゃらないの？」

あ「あ、はい！全て私に一任されています。」

印鑑や請求書を取り出しているお母さんの元へ私は慌てて駆け寄る。

淳太くんは辛そうに顔を歪めて下唇を噛むと、大きく息を鼻から吸いこんだ。

淳「おかん、そんなんいらへん！俺はまだここに居る。」

いつもより声を張ってお母さんの前に出る淳太くんの足は小さく震えていた。

「これは決まった事で、あなたの意見を聞くために私はここに来たんじゃないの。」

はっきりと言う彼女に淳太くんは、でも俺はここ以外考えられへんねんって、必死に抗議する。

俺仕事の効率も上がったんや！夜中唸れる事も減ったし、症状だっていい方向に進みそうなんや！って淳太くんの声はいつもより大きいのに、何故か霞んで聞こえる。

お母さんも黙ってはいるものの、耳に入っている様子はなかった。

淳「この病院離れたら、俺治らへんよ！！」

その言葉にピクッとお母さんが反応した。

そしてゆっくり淳太くんへと視線を動かすと、少し躊躇う淳太くん。

あ「あの…考え直して頂くことは出来ませんか？ここには同じ症状の患者さんがいますし、お互いの励みになると思うんです…。」

ゆっくりと私の方を見た。

その瞳はどう見ても睨んでいる様で明らかに怒っているみたいだった。

「…あの、勘違いをしている様ですのでハッキリ言いますけど、私はこの病院ではなく貴方に不満があって病院を移すんです。」

あ「…え？」

「貴方」そう言って私を睨むお母さん。

その言葉を聞いた瞬間、時間が止まったみたいにその場はシーンと静まった。