7.工房 ページ7
『いらっしゃいませ』
私の仕事はポアロに豆を届けるだけじゃない。自分の店も開いてい る。店番も私の仕事だ。とはいえ自営業。それなりに自由のきく仕事である。
自宅用の豆から豆と相性の良いクッキーやチョコ、マドレーヌなど様々なお菓子を売っている。
店の名前は「珈琲豆工房まめや」
客の数は多くはないがポアロのようにいくつかの喫茶店に豆を売っていることで生計が立てられている。
今入ってきたお客さんは大きな白いヒゲにふくよかな体型のおじいちゃん、という言葉がよく似合う男性だ。
「すまんがこの豆は置いているかね?頼まれたんだが…」
『ああ、置いていますよ。ご家庭用ですか?』
「まあ、そうじゃの。」
『一度メモをご確認させていただきますね。』
豆にはあまり詳しくないおじいさんってことはお孫さんにでも頼まれたんだろう。
わざわざ指定してまで豆を買いに来させるということは私の豆のファンなのかもしれない。きっとどこかの喫茶店のコーヒーを飲んで気に入ってくれたのかもしれない。
とはいえ、実際に本人が来てくれないことが残念だが。
どんな人だろうなあ。喫茶店に入って珈琲をわざわざ指定するってことはキッチリした人かもしれない。40代後半のおじさまとかかもしれない。うん、似合うなあ。
『お待たせいたしました。こちらメモの注文通り、マンデリンのハイロースト100gです。』
「はあ、これがそれなのか。」
『ええ。オーソドックスな豆ですね。もし普段飲まれないのであればミルクを入れることをお勧めします。』
「ほお、ところで…そこに置いてあるクッキーとかも売り物なのかね?」
『はい。珈琲と相性の良いお菓子を手作りで用意させていただいてます。何かご希望のものはありますでしょうか?』
「そうじゃのお。じゃあそのクッキーをえーっと…7ついただけるかの。」
『ありがとうございます。豆とクッキー、合わせて1500円になります』
7つ。7つ?随分な大所帯の家庭環境らしい。
もしかしたら自分で食べるためかもしれない。
人当たりの良さそうなおじいさんだからもしかしたら近所の子供達に配っているかもしれないけど。
それにしても優しいなあ、この人。人に頼まれたこともできて、頼まれてないことも良かれと思って行動できる。
本当にいいおじいちゃんだ。
『ご来店、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております』
心の底からまた来て欲しいと思った。
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京風ラーメン - 武虎さん» コメントありがとうございます。この後の展開もその勘違いが上手く繋がっていくように考えていますので、2人を楽しく見守っていただけると嬉しいです。武虎様も、流行の病のみでなくインフルや花粉、五月病に負けぬようお身体を大切にして下さいね:) (2020年2月29日 1時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
武虎 - 勘違い……なんだけれどもかみ合って進んで行く楽しさ。大好きです。この御時世、お身体ご自愛しつつ更新をお願い致します。 (2020年2月27日 21時) (レス) id: a4e61f3629 (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 桜ひかりさん» コメントありがとうございます。勘違いの部分を楽しく見ていただからとこだわった甲斐があります。更新も出来る限り頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月22日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - 勘違いが凄すぎて笑ってしまうwww更新してくださるの楽しみにしてます (2020年2月18日 21時) (レス) id: d6d394990c (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 鴉屋媒鳥さん» :−P (2020年1月31日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:京風ラーメン | 作成日時:2020年1月11日 2時