35.協力 ページ46
『いらっしゃいませ。』
「こんにちは」
『安室さん。どうしたんです?』
前に彼が店に来てから一週間も経っていない。彼が探偵にポアロにと忙しいのを知ってる身としてはここに来るほどの暇があるのか疑ってしまう。
「少し話したいことがありまして。」
『はぁ。ここで話せることでしょうか?』
時間がかかるのであれば仕事を終わらせた後かまた日を改めて貰う必要がある。随分とかしこまって話しているということは重要なことなのだろう。
「いえ、なので一緒にディナーでも、と思いましてね」
『えっ』
ニコニコと笑う彼の本質が見えない。ディナーって、せめてこう、飲みに行こうとかの言い方ができないのか。
「今夜空いてます?」
『えーっと、ドレスコードが必要な店で無ければ大丈夫ですが』
「ああ、大丈夫です。個室を取っていますから。」
用意周到。今日が空いているかどうかも分からない相手なのに。既に個室を取っているなんて。
「では、今夜。この店の前に8時に。」
『あー、はい。分かりました。』
「ああ、それと…」
先ほどの営業スマイルから一転。
真剣な表情に変わる。あの時みたいだ、ヤカンの時の。
「詳しくは後で話しますが、奴らが監視しているかもしれません。」
奴ら?一体誰だ。監視されるようなことしただろうか。
いや、ひとつ。思い当たる節がある。
_______十億円強奪事件について。
もしかしたら安室さんはそれを気付いたのかもしれない。毛利さんにでも話を聞いて。それで、私に警告をしたいのかもしれない。これ以上踏み込むな、と。
「できれば貴女を巻き込みたくは無かったがそうもいかないようだ。貴女には協力してもらう必要がある」
『協力、ですか。やりますよ。私が首を突っ込みすぎたせいですから。』
「…ありがとうございます。」
重い空気がまた一転。ニコニコとした笑みが彼の顔に戻る。
「それでは、今日の夜に。」
『はい。ありがとうございます。』
わざわざ警告をしに来てくれて。という意味での感謝。帰っていく彼にも、きっと伝わっただろう。
ふう、と一息つく。
やはりやばい事件だったのか。やめておこうと思ってはいたが、既に手遅れだったのだろうか。
彼が協力を求める、ということはつまり探偵としての仕事の手伝い的な意味だろうか。
もし、私が首を突っ込んだせいであるなら、協力する責任がある。
夜の訪れが、少し怖くなった。
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京風ラーメン - 武虎さん» コメントありがとうございます。この後の展開もその勘違いが上手く繋がっていくように考えていますので、2人を楽しく見守っていただけると嬉しいです。武虎様も、流行の病のみでなくインフルや花粉、五月病に負けぬようお身体を大切にして下さいね:) (2020年2月29日 1時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
武虎 - 勘違い……なんだけれどもかみ合って進んで行く楽しさ。大好きです。この御時世、お身体ご自愛しつつ更新をお願い致します。 (2020年2月27日 21時) (レス) id: a4e61f3629 (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 桜ひかりさん» コメントありがとうございます。勘違いの部分を楽しく見ていただからとこだわった甲斐があります。更新も出来る限り頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月22日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - 勘違いが凄すぎて笑ってしまうwww更新してくださるの楽しみにしてます (2020年2月18日 21時) (レス) id: d6d394990c (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 鴉屋媒鳥さん» :−P (2020年1月31日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:京風ラーメン | 作成日時:2020年1月11日 2時