13.野犬 ページ15
「わぉんっ」
『よーしよしよし良い子だ良い子だ。ほれお腹も撫でてやろう。よーしよしよし』
恰幅の良い男の子にお礼を言われてから数十分後。しばらくは彼らを眺めていたが次第に解散してしまった。仕方ないので買った缶コーヒーを飲み干して家へ帰ろうとしたところ。
野犬。いや、野犬というほど強そうでもないし凶暴そうでもない。
捨て犬?それともまだ仔犬だからこんなにか弱いのか?
とにかく、可愛らしい子犬に捕まってしまったのだ。引きはがせることができず、またベンチに座り直した。
その仔犬の白かったであろう毛皮が薄灰色に汚れ、耳の先や手に傷が付いている。
「わぅんっ!」
『ほー、ここが気持ちいいのかい?よーしいいぞーもっとやってやろう。』
怪我には極力触れないようにしつつ、ふわふわした毛を撫で回す。
「わぅ」
『ごめんね、飼えないんだよ。』
曲がりなりにも食品を扱う店を開いている身として家に連れ込むことも出来ず、仕事帰りに撫で回し、家に帰ったら玄関に置いてあるコロコロで服に着いた毛を取る。
万が一、店のクッキーにでも毛が入ってしまったら、と考えると仕事中に簡単に動物に触れることができない。
「わぅ」
『なるほどね、うん。…わぅ。わんわん。わぉう』
「わぅんっ!」
『わぅ、わぉ、う?』
「わぅん」
会話になっていない気がする。いや、実際になっていない。ハッハッハッと息を荒くしてキラキラした目で見られても伝わっていないものは伝わっていないのだ。
『お手。』
「わぅ」
『違うんだよ、お手って言われたら、こっちの手をここに…ほら、こう。』
「わぅ」
『よし、じゃあもう一回。お手!』
「わぅん!」
『こっち、こっちの手をここに置いて…ほら、ぽんって、』
「わぅ」
無理なようだ。動物に何かものを覚えさせることは予想よりも難しい。仕方ない。ここまで私の自分勝手な躾に付き合ってくれたお礼だ。思いっきり撫でよう。
『気持ちいいかい?』
「わぅん!」
私の言葉に返事をするのだからきっと頭は良い子なんだろう。育てる人によってはこの子もっと賢くなるんだろうな。
『よーし、君はシロ。いいね。シロ。』
「わぅ!」
気に入ってくれたのか尻尾を勢いよく振っているシロ。
以前のミケランジェロ、大尉のことを思い出す。
もしかしたらこの子の名前も違うのかもしれない。
『シロ』
「わぅん。」
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京風ラーメン - 武虎さん» コメントありがとうございます。この後の展開もその勘違いが上手く繋がっていくように考えていますので、2人を楽しく見守っていただけると嬉しいです。武虎様も、流行の病のみでなくインフルや花粉、五月病に負けぬようお身体を大切にして下さいね:) (2020年2月29日 1時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
武虎 - 勘違い……なんだけれどもかみ合って進んで行く楽しさ。大好きです。この御時世、お身体ご自愛しつつ更新をお願い致します。 (2020年2月27日 21時) (レス) id: a4e61f3629 (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 桜ひかりさん» コメントありがとうございます。勘違いの部分を楽しく見ていただからとこだわった甲斐があります。更新も出来る限り頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月22日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - 勘違いが凄すぎて笑ってしまうwww更新してくださるの楽しみにしてます (2020年2月18日 21時) (レス) id: d6d394990c (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 鴉屋媒鳥さん» :−P (2020年1月31日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:京風ラーメン | 作成日時:2020年1月11日 2時