【名探偵コナン】お得意様の喫茶店【安室透】

バレンタイン特別編2 ページ39

疲れた。とにかく疲れた。

いつもより配達が多いとはいえ夕方には店に戻れる予定であったのだが、他の店から追加発注も来てしまい、急いで配達していたらすっかり外は真っ暗だ。

普段通らない道なこともあり、つい好奇心から見知らぬ公園に入って缶コーヒーを１つ飲む。

せっかくだし梓さんからもらったマフィンも一緒に食べよう。もっそもっそと食べる。美味しい。ナッツ以外に中にはチョコとドライフルーツが入っているようだ。


知らない公園に、綺麗な星の夜に、1人で。

背中がゾワっとするのは少し興奮しているのだろう。


缶コーヒーをカコン、と開ける音。それと同時に背後にある自動販売機近くからガコンと大きな音。

人がこんな時間にいることに驚き、ついちらりと見てしまった。



『あれ』

「…こんにちは、お仕事は？」


そこにいたのはつい数時間前に見た金髪の男性。
なにやら手に黒い中くらいの袋を持っている。爽やかな笑顔がなければ不審者だ。


『配達帰りの休憩です。それで、安室さんはどうして？』

「僕も仕事帰りの休憩ですよ。」

『へぇ…それで、その手に持っている黒い袋に入っているのは？』

「…車の中のゴミですよ。」

『3袋分も車に溜めてらっしゃったんですか？』

「ええ、意外とずぼらなところがありまして。」


『安室さん。』

「はい？」



『………それ、チョコですか？』

「…なぜそう思ったんです？」


『いやカマかけただけです。その反応から本当なんですね。』



車から出たゴミなんてわざわざこんな公園に車を止めてまで捨てる必要はないだろう、と思ったことと袋も車のゴミなら適当なコンビニ袋にするだろうという理由から。


「すみません…このことは、」



『………ドライフルーツとナッツ。あと砕いたチョコが入っていました。マフィンの上の方がサクサクとしていて中はふわふわ。チョコレートの香りも強くコーヒーとよく合います。』

「…Aさん？」

『梓さんのチョコですよ。明日だってポアロは開くでしょう？もし感想聞かれたらそれを元に話した方が良いんじゃないですか？』

「…」

『手作りが無理だという人だって少なくない。仕方ないですよ。でも隠し通すなら最後までしっかりと隠し通しましょう。』

「………ありがとう、ございます。」

『いえいえ。ホワイトデーのお返し、楽しみにしてますよ。』


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