23.爺孫 ページ27
ある日曜日。
「おつかれさまーっす!」
『お疲れ様。早く着替えてきてね』
ういーっすと言い奥へ入っていく仁君。
休日のバイトとして雇っている彼はフットワークが軽く、明るい人間性だ。
『着替えたら私ポアロに配達行ってくるけど』
「あ!OKでーす!」
比較的珈琲屋というものは大人しい人間が多い中でこの明るさは目立つ。しかし彼の友人や人脈のお陰で売れていることもあり、彼には陰ながら感謝している。
『火傷しないようにね』
「もちろんすよ!」
手をひらひらさせながらお見送りされる。それに片手を上げて返す。きっと私はすごくかっこいい後ろ姿に見えているはず。この流れがいつもの日曜日。
少し道を歩き、パーキングまで。この店には駐車場なんてものはないのである。近くのパーキングに停めている車に乗らなければ配達もスムーズに行えない。
『あ』
パーキングまで歩いている最中。
つい嬉しさで声を上げてしまった。あの時のおじいちゃんだ。
いい人オーラが前面に押し出ている。おじいちゃんのとなりにいる女の子はお孫さんか?
もしかしたらこの前のクッキーもそのお孫さんの為かもしれない。孫を溺愛するタイプというか、子供全般を溺愛するタイプのおじいちゃんだろう。
「ほんとお人好しね、彼らの為にまた買いに行くなんて。」
「あれだけ美味しそうに食べてる姿を見てしまったらのぉ。」
会話が聞こえる距離。ああ、やっぱりいいおじいちゃんだ。それでいてクールなお孫さんだ。なんていいコンビなんだ。
いやいや、待てよ。また買いにいくってもしかして私の店の話ではないだろうか?しかし今から店にUターンするのは怪しすぎる。そうだ、私は梓さんに豆を届けなければならないのだから。
「で、店はどこなの?」
「そろそろじゃったが……」
「店の名前は?」
「なんだったかのぉ、豆やだったのは確かじゃ」
「そりゃそうでしょ。豆を売ってるんだから。」
やっぱり私の店じゃないか。いや、駄目だ。Uターンなんてしてはいけない。そう。ここは彼らの横をおとなしく通り過ぎる。
「でも…ちょっと楽しみね。珈琲豆を売る店なんて、なかなか行かないから。」
『んぐっ、』
声に出ちゃった。彼らのちょうど横を通り過ぎる瞬間に変な声出ちゃった。怪しいと思われてない??大丈夫???
いや、セーフセーフ。大丈夫。気付かれてない。
あんなに可愛い女の子が珈琲豆に興味を持ってくれるなんて嬉しいが過ぎる。
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京風ラーメン - 武虎さん» コメントありがとうございます。この後の展開もその勘違いが上手く繋がっていくように考えていますので、2人を楽しく見守っていただけると嬉しいです。武虎様も、流行の病のみでなくインフルや花粉、五月病に負けぬようお身体を大切にして下さいね:) (2020年2月29日 1時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
武虎 - 勘違い……なんだけれどもかみ合って進んで行く楽しさ。大好きです。この御時世、お身体ご自愛しつつ更新をお願い致します。 (2020年2月27日 21時) (レス) id: a4e61f3629 (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 桜ひかりさん» コメントありがとうございます。勘違いの部分を楽しく見ていただからとこだわった甲斐があります。更新も出来る限り頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします。 (2020年2月22日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
桜ひかり(プロフ) - 勘違いが凄すぎて笑ってしまうwww更新してくださるの楽しみにしてます (2020年2月18日 21時) (レス) id: d6d394990c (このIDを非表示/違反報告)
京風ラーメン - 鴉屋媒鳥さん» :−P (2020年1月31日 0時) (レス) id: 58d253c9c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:京風ラーメン | 作成日時:2020年1月11日 2時