【MHA】異端掃除者は冷徹に歌う。 (ページ5)

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Ⅰ.「ねりねり」ページ5

異端がヒーロー科のA組に入学しようとしたので、天使が操作能力を使って阻止して、異端を含めた皆の記憶・認識を弄って普通科に入学したことが『なにもおかしくない』状況にした。
そんなこと気づきもしていない異端は、なにがなんでもヒーロー科に転科しようと頭をけんめいに回しているようだ。
それをテレパシーで把握しながら、Aは練り飴をねりねりしていた。

「また懐かしいもんを…」
「む？」

目の前の席の椅子がガタガタと音を立てたかと思えば、そこに座ったのはキャラクター・心操人使その人であった。
目の隈と髪型で誤魔化されがちだけれど彼も整った顔貌の持ち主なので、性格・経歴もあって異端に狙われやすいキャラクターなのである。

「お前、飴なら何でも食うのな」
「おいしいよ。たべる？」
「いや、俺さっき飯食い終えたばっかだし。味が混ざる」
「なるほど」

未だねりねりしつつ、Aは答えた。
心操は表情こそあまり変わってはいないが、心なしかAに引いているように見える。
練り飴、おいしいのに…。

『――いや、昼休憩っつても学校にンな手間かかるモン持ち込んでるお前に引いてんだろ』

と、Aの思考を拾った天使がすかさず突っ込みを入れてきた。

(むう…)
『むうじゃねェ、お馬鹿。食い切れずに先生に雷落とされたら困ンのお前だろ？』
(…おこられる、こまる)
『解ったら学校では食うな。家では食ってもやらかさなきゃ何も言わねえから、な？』
(がくしゅうした)
『よろしい』

ねりねりし終わった飴をくわえて頬を動かすAを見て、心操が(ハムスターに似てんな…)と考えているのを拾った天使が軽く笑った。気持ちは分かる。A、口小さいしな。
役割上、異端が侵入しているときはテレパシーをほぼ常時発動させているので、時折こういうことが起こるのだ。

『…と、』

和んでいるうちに面倒な目的を抱いて異端が動き出した。天使は踵を返して浮かび上がり、教室から出ていったそいつを追う。
異端は中庭のすみに向かい、それから植物でごちゃごちゃして入り組んだところを進むが、擬態時でない状態だとなにもかもをすり抜けられる天使にとっては透視を行使すれば進めば大した障害になりはしない。
しかし道が空けたところに出る前に、天使は操作能力を行使して目的を忘却させ、しぶしぶ教室へと帰還させたのだった。
ちなみにあの場に居たのは、動物と戯れる口田である。
異端の目的は、彼に接触してA組と接点を作る事だった。