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『お友達の世一くん。それで、こっちがわたしの恋人の冴』

「えと、久しぶりだな冴」

「あぁ」


今すぐに帰りたい、潔はそう思いながら笑顔を作る。姉、と言っても血など繋がっていない。ただその立ち位置がピッタリと当てはまる人。それは、弟と紹介した彼女も同じことを思っているのだろう。潔は呑気に高知を啜る彼女に視線を向けた。紅茶よりも、自身を睨み不機嫌だと言わんばかりの冴を、宥めて欲しいと潔は地獄のような空間で願っていた。


『世一くん急だったのにありがとう』

「全然!雪ちゃんにまた会えてよかった」


「電話も繋がらなかったから、もう会えないと思ってた」そんな潔の言葉に雪は苦笑いをする。冴が親以外の男の連絡先を消したから繋がらなかった、なんて口が裂けても言えない。もし、かけてきたとしても、それは冴の手によって着信拒否にされていただろう。雪は自分を心配してくれていたらしい潔に、罪悪感が湧いた。


『今は冴と同棲してるの』

「そっか」


穏やかな表情で返事をする潔に、雪は少し驚いた。それは雪が彼には怒られてしまうと思っていたからだ。一切連絡など取らず、心配をかけさせていたのにも関わらず、日本の至宝とも言われる糸師冴と同棲など、他の人が聞けばきっと彼女の背中を指さして、非難していただろうから。しかし、目の前の彼は違った。


『怒らないの?』

「え、なんで?雪ちゃんが幸せそうなのに?」

『え、?』


二人して、瞬きを繰り返す。わたしが幸せ、だから……。潔の言葉を雪は頭の中で反芻させる。そして、その意味を考え、改めて理解した。彼はとても優しい人間だということを。

潔世一という男は人に優しかった。それは雪に対しても同じだった。否、姉のような存在という彼女には他人よりも優しく、大切にしていた。それを、雪も理解して、同じように潔に他より優しく大切を返した。そうやって、二人は姉弟のような関係になってきたのだ。


『そうだね、うん。わたしとっても幸せ』

「見てたらわかる。雪ちゃんずっと笑顔だから」


冴の腕に両手を絡めて笑顔で潔にそう言うと、彼もまた同じように笑ってそう言った。そんなにも笑顔だっただろうか。人に指摘されると余計に恥ずかしくなってくる。潔の言葉に雪は羞恥心を抱きながら、冴の指に自分の指を絡めた。

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うつ(プロフ) - レンヤさん» コメントありがとうございます!レンヤ様のオメガバースを好きになるきっかけになることができてよかったです🫶🏻楽しみにして頂いてありがとうございます🙇🏼‍♀️💕応援してくださってとても嬉しいです☺️ (2023年4月21日 13時) (レス) @page8 id: c201149121 (このIDを非表示/違反報告)
レンヤ(プロフ) - 初めましてコメント失礼致します。作者様の前作にオメガバース作品の良さを教えて頂きました✨ 続編を作られていてこれからの続きが凄く楽しみです!かげながら応援しております!! (2023年4月21日 8時) (レス) id: 315830c04e (このIDを非表示/違反報告)
うつ(プロフ) - 砂時計さん» コメントありがとうございます。続編も読んでくださりありがとうございます、!ドロドロ甘々なお話を目指しているのでそう言って頂けてと手も嬉しいです😿♡これからも二人のドロドロイチャイチャ生活を見守っていただけると幸いです💕 (2023年4月10日 11時) (レス) id: c201149121 (このIDを非表示/違反報告)
うつ(プロフ) - 真昼さん» そう言って頂けてとても嬉しです、!不定期更新ですが、気長にお待ちください🫶 (2023年4月10日 11時) (レス) id: c201149121 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - コメント失礼します。続編、おめでとうございますっ、また、お二人のお話を読むことが出来てとても幸せです😭♡ 作者様の仄暗さと甘ったるさの詰まった感情描写がとても美しくて好きです。これからも作者様のペースで更新のほど頑張ってください!! (2023年4月1日 9時) (レス) id: 9f48da2d13 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うつ | 作成日時:2023年3月20日 9時

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