99.待ちわびた日 ページ1
「ドンとギルダは多分⋯今もまだ起きてる。
「足は？」
「大丈夫！」
松葉杖なしで立ち上がって証明する。
「よし、じゃあ今から決行しよう」
「レイ⋯⋯」
レイはオイルの蓋を開けると、食堂の燃えやすそうな木製の床に油をぶちまけていく。
「大丈夫」
「？」
「ここは子供部屋から一番遠い。火が回る前にちゃんと逃げられる」
「本当を言うとな、俺はやっぱり“全員”には反対だ」
私に背を向けているからレイがどんな表情をしているかわからない。
「ムリだと思う。崖だったしより一層⋯連れて行ってもドンとギルダまで、それが正しいラインだと俺は思う」
話しながらもレイの手は止まらない。
「せめて赤ん坊だけでも置いていくべきだ。お前のためにも、
まぁでもお前は止めたって聞かねえし。それでお前が逃げずに残るよりゃいい⋯⋯ずっといい。
だからこれ以上は言わない。最終的にはお前が決めろ」
オイルを撒き終えるとレイはオイル缶を投げ捨てた。
その音がやけに閑散とした夜の食堂に響いた。
「さぁ何してる。ドンとギルダに伝えて来い」
「⋯⋯ねぇレイ、一つ気になったんだけど、火事を起こしてもさ⋯⋯ママがもし建物を放棄したら？
ママは火を消すことを諦めて私達商品から目を離さないかもしれないでしょ？」
その“もしも”が頭に浮かんで嫌な汗が頬を伝う。
「⋯⋯⋯気づいた？
そう、確かにその通り。その可能性も存分にある。ただ火事を起こすだけじゃ不十分だ。確実にママの手を塞がなきゃ、ママから逃げる隙をつくれねぇ」
まだ持っていたのか、レイは箱からまたオイル缶を取り出した。
「でも問題ない。考えてある。シンプルな話さ、こうすればいい」
蓋を開けて、オイル缶を頭上まで持って行き、
───バシャッ
あろうことか、レイはオイル缶の中身を自分にぶっかけたのである。
レイの黒髪がオイルを纏っててらてらと光を反射する。
「レイ！！？」
「サイコーだろ？出荷が決まってる
レイはニヤッと口角を上げた。
「この日を待っていた」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 354人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルノチキ(プロフ) - サクラさん» サクラさんコメントいつも本当にありがとうございます！！申し訳ないのですが受験生のため、来年の3月くらいまで一度更新停止させて頂いています。どうか気長にお待ち頂けると幸いです。 (8月30日 17時) (
レス) id: 78d43729cf (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続きお願いします。 (8月13日 14時) (レス) id: fb2a310b55 (このIDを非表示/違反報告)
ルノチキ(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます！そんな風に言って貰えてすっごく嬉しいです！！更新再開までお付き合い頂けたら幸いです。 (6月15日 16時) (レス) id: 78d43729cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - こんなにも面白い作品をありがとうございます。 (6月13日 4時) (レス) @page11 id: 3f6213cd29 (このIDを非表示/違反報告)
ルノチキ(プロフ) - サクラさん» 毎度この作品を読んでくださりありがとうございます。そう言ってもらえて何よりです！ (5月8日 22時) (レス) id: 78d43729cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルノチキ | 作成日時：2022年8月22日 17時
