101.グル ページ3
「バイバイ、エマ」
重力に従って落ちていくマッチをエマが両手で挟んだ。
「え」
「ナイスキャッチ」
エマは火で自分の手が傷つくのも気にせず、してやったとばかりに笑った。
「ノーマンからの伝言」
なんでここでノーマンが⋯?
「“ここじゃなくてもまだ死ねる”
“いいモノ見せてやるから黙って来い”」
「は!?」
「わかってたの、レイがこうすることとか。ノーマン全部気づいてたんだよ、出ていく前に。だから止めろって言われてた」
オイルなのか汗なのかよくわからない液体が頬を滑った。
「悪いけど、死なす気ないから。私とノーマンとAとあの子達がレイのこと絶対死なせないから」
「“あの子達”?一体どういう⋯⋯」
疑問に思っているとドアのノックと共にラニとトーマが入ってくる。
「エマ、これ頼まれてた物持ってきた」
「あとみんなもう準備はできてるぜ!」
箱を持つトーマとグッドサインをするラニ。
こいつら、まさか知ってるのか?
「じゃあレイ、着替えて」
「!?」
「説明は後。全てノーマンの計画通り。逃げるよ」
──
─────
「着替えた?じゃあ次そこ座って」
「⋯⋯⋯いや、でも⋯⋯エマ⋯俺は、」
俺は生にしがみついていいような人間じゃない。
思わず俯くとエマにスパァンと勢いよく叩かれた。
「まだ死ぬつもりかこのわからず屋!つべこべ言わずに逃げるの!」
「エマーこっちできた」
2人の方を見るとオイルに浸された服の上に、ハムやソーセージの肉類と、三つ編みの束が2つ。
なるほど、俺の代わりってわけか⋯肉と髪を使えば、人間が燃えるとき特有の臭いも表現できる。
「その髪⋯⋯」
「アンナがくれた。⋯Aがいたら今頃レイのこと引っぱたいてるだろうな、“女子に髪を切らせるなんて何事かっ!”って」
そんなAの姿が容易に想像がつく。なんなら、アンナの髪を切るくらいなら俺の髪を⋯なんて言い出しそうだ。
「あとは発信器。取り出すからそこ座って耳出して」
エマに発信器を取り出して貰った後。何がなんだかからないまま、靴に履き替えてリュックを背負って、塀に向かって走り出す。
どういうことだ?こいつらグル?
全部バレてた?“ノーマンの計画”?
今、何が起こっている?
356人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルノチキ(プロフ) - サクラさん» サクラさんコメントいつも本当にありがとうございます!!申し訳ないのですが受験生のため、来年の3月くらいまで一度更新停止させて頂いています。どうか気長にお待ち頂けると幸いです。 (8月30日 17時) (レス) id: 78d43729cf (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続きお願いします。 (8月13日 14時) (レス) id: fb2a310b55 (このIDを非表示/違反報告)
ルノチキ(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます!そんな風に言って貰えてすっごく嬉しいです!!更新再開までお付き合い頂けたら幸いです。 (6月15日 16時) (レス) id: 78d43729cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - こんなにも面白い作品をありがとうございます。 (6月13日 4時) (レス) @page11 id: 3f6213cd29 (このIDを非表示/違反報告)
ルノチキ(プロフ) - サクラさん» 毎度この作品を読んでくださりありがとうございます。そう言ってもらえて何よりです! (2023年5月8日 22時) (レス) id: 78d43729cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルノチキ | 作成日時:2022年8月22日 17時