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7.鬼ごっこ ページ8

走って外に出ると、レイが本を読みながら寄りかかっている木のところにエマたちが見えた。
よかった、まだ間に合う。

「俺とコニーもい〜れて!」

「うん!!!」

俺がそう声をかけるとエマはキラキラと輝く笑顔を見せた。
…ほんと眩しいな。


「Aも参加するの〜!?」

「うん、今日は特に約束もないからな!」

「やったぁ〜!」

約束、というのは俺が家族の子に頼まれて主に絵を描いたり、読み聞かせをしたりすることだ。
簡単に言えば一緒に遊ぶ約束をすること。

たまに勉強を教えたこともあった。



「OK、数えるよ!」

「いーち、にーい──」

ノーマンが数え始めるとみんな一斉に森へと駆け出した。


俺も逃げるか。




どこにどんな岩があるとか、赤い実をつける木の位置とか、この森がどのくらいの広さなのかも、隅々まで知り尽くした。

いつもの見慣れた光景が並んでいる。


もう10年以上ここにいるから、わからないことなんかない……たぶん。




この広い敷地で逃げ回る、なんてことはしたくないから木の上に登って息を整える。

目を閉じることで視覚情報を遮断して、聴覚に意識が向かうようにする。



風の揺らぎと微かな足音。
これは…ノーマンだ。

アイツは俺がここにいることに気づいているだろう。


俺が鬼ごっこをするときはだいたいここに逃げ込んでいるから。
アイツがここに来たなら…残っているのはエマと俺だけということだ。


ノーマンも俺も相手に居場所がバレているなんてことわかっているし、だからこその駆け引きだ。



よし、行くか。

木から飛び降り、すぐさま他の木や岩などの障害物を使って逃げる。これで撒ければ御の字なんだけどな。

ノーマンはそれもわかっているから最短距離でこっちに詰めてくる。



暫くチェイスが続いた。
そろそろ頃合かな。

俺は体力が無くなったことを装い、徐々にスピードを落としていく。

肩に手を置かれ、足を止める。

「わざとでしょ?A」

ノーマンくんってば圧が怖いんだよ、まじで。


「最近鬼ごっこやって無かったから体力落ちただけだよ」

嘘はついてない

実際、最近は室内でピアノを弾いたり、読み聞かせしてたから鬼ごっこはしてなかったし。

そりゃ当然体力も落ちる。


「ふーん、まぁそういうことにしておくよ」

そういってノーマンはエマがいる方向へ走っていった。


まだ走れたけど疲れたのは事実だから!!
俺が逃げ切ることよりもエマとノーマンの一騎打ちの方が大切だ。

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作者名:ルノチキ | 作成日時:2021年5月9日 12時

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