30.ピアノday ページ31
シスターは握手をし終えると、満足して愉快そうに去っていった。
「聞かれたか？」
「それはないね」
「いや大丈夫。それよりレイ、ひょっとしてママ......」
ノーマンは何やら勘づいた様子だった。
翌日の自由時間になった。
「外だー！！」
エマがいつもよりも高いテンションで外へと走って行った。
年少者達もまたエマとともにはしゃいでいる。
途中、エマの曲がった襟をママが直していたのがなんとなく見える。
そんないつもの日常を俺は窓から眺めていた。
今日は勉強dayなのである。
あとピアノを弾く。
定期的に弾かないと腕が鈍ってしまうし良い機会だ。
早くて明日には鬼ごっこと称した訓練があるだろう。俺も最年長だし必然的に教える側に回ることになる。
そしたら勉強する暇なんて夜くらいしか無くなるだろう。
だから今日だけでも勉強しておくってわけ。
まぁ勉強と言っても前回のテストの復習するくらい。
もちろんメインは医術の類いの本を読むこと。
俺は図書室に向かい、医術関連が置いてある棚で本を漁った。
薬草とか前世じゃ見たことない種類がいっぱいで面白い。
そういえばテストで思い出したけど、ノーマンより早くフルスコア取れたのはやっぱり嬉しいなぁ。
先に、とは言え問題を解くスピード的にはノーマンの方が速いわけで...
やっぱりノーマンは賢い。
閑話休題
勉強も無事終わったのでピアノを弾くことになりました。
「弾いて欲しい曲ある？」
何弾こうか迷っていたので、ナイラに聞くことにした。
「んー、あれ！エリーゼ！」
「『エリーゼのために』のこと？」
「そう！」
前に一度だけ弾いたのを覚えてたんだろうか。
ナイラがわくわくとした表情を浮かべている。
深呼吸をして鍵盤の上をに手を置いた。
【〜♪〜】
エリーゼのために...
きっかけは忘れたけど、クラシックの中で一番好きだった曲。
ベートーヴェンの乱筆によってテレーゼという女性の名前が誤読されたのでは、という話は有名だ。
そんな彼が身分違いの恋を描いたもの、という説が一番有力だとかなんとか。
3分程度の曲だからかあっという間に弾き終わってしまった。
ナイラの方を向くとぼんやりとしている様子でただ俺を見つめていた。
「ナイラ？」
「...やっぱりA上手だね！今度ナットとの連弾も聴いてみたい！」
「うん、ナットと練習しとくわ！」
確かにそれもいいかも。
そして何事もなく今日も一日が終わった。
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作者名：ルノチキ | 作成日時：2021年5月9日 12時
