20.賛成 ページ21
「馬鹿げてる！
...なぁ、Aだってそう思うだろ！？」
レイが必死な顔でこちらを見る。
さっきノーマンは言った...エマが泣いた。しかも家族を想って。
俺はあの場にいたわけじゃないからそれを絵を通してでしか見たことがない。
でも...この10年間ハウスで過ごしてわかる。
エマは自分が転んで怪我をしても涙を堪えるような子だった。
＿＿そんな子が泣いた、家族のために。
だったらそんな子の願いを叶えて上げるのが筋だろ。
こんな見てくれでも精神だけは大人なんだ、ここまで関わってしまったからには最後まで責任を負わなければ。
レイには悪い...けど
「ごめんねレイ、俺も“全員で逃げる”賛成派なんだよ」
「なっ、さっきの話を聞かなくてもお前もわかってんだろ！？
なら、なんで...！！」
「一度そう決めたら、エマはそれを絶対に曲げないだろ。
...それにエマが言えばどんなことでもできるって思っちゃうんだ。
そして、その考えにノーマンが乗った。
既にフルスコア2人が賛成してる。
そこにレイも加わって協力すれば必ず全員で逃げることができる。
泥船の話もそうだけど泥を包んじゃえば関係ない、だろ？
だったら俺はそれをサポートするまで」
「どうする？僕もAもエマも正気じゃないよ。完全に血迷ってる。
放っとけないだろ」
「──クソッ、放っとけるわけねぇだろ」
──
────
「これ見ろよ」
そう言ってレイが差し出したのは──
「『機械工学と人類の歩み』...」
「じゃなくて中、出版年」
本には2015年と記されていた。
今は2045年だからこの本が出版されたのは30年前になる。
これを30年も経ったととるか、ほんの30年ととるか...
それだけでも大分変わってくる。
「ハウスにある本でそれが一番新しい。素直に考えりゃ少なくとも2015年までは
さっきはああ言ったがほんの30年。外に人間社会がある可能性もゼロじゃない、だが勝算のねぇバクチじゃダメだ。
外を知り、敵を知り、策を打ち生き延びる
やるからには勝つぞ！」
「うん！」
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作者名：ルノチキ | 作成日時：2021年5月9日 12時
