3 ページ3
「あ、覚ちゃんも世界一のエース目指しなよ」
「お、俺は無理！ブロッカーがいいよ」
「なんで？」
「だって……スパイクが決まるって瞬間の時、叩き落すの。そしたら、悔しそうに相手が俺を見る。それがいい」
「ふーん、変わってんね」
はっきりと言うタイプだったAに言われてしょげる。すると「ごめんって！」と彼女は謝った。
「じゃあ、頑張るためにも練習いっぱいしてさ、あいつら見返してやろっ！」
「うんっ」
日が暮れるまでバレーを一緒にして、青あざを同じところにつけて。
道路を挟んで向かいだったAと俺の家。
いつも学校に行くときも帰るときも分かれるのは家の前。
「ねぇ……その覚ちゃんっていうのやめてよ。女の子みたいじゃん」
「え〜？いいじゃん覚ちゃん。私は呼びやすいし！」
「え〜……」
「あ、夕飯今日はカレーだ！じゃあね覚ちゃん、また明日！」
「うん」
手をぶんぶん振る彼女と、小さく振る俺。
がちゃんと扉が閉まる音がして、俺も家に入る。
「ただいま」
電気のついていない部屋。ぱつん、とつけると机の上には冷めた料理があった。
それと一緒にメモもある。どうせいつもと同じなので、見ずに捨てた。
このメモに書いてある漢字は難しいけど、この漢字たちは読めた。
［今日も遅くなります。先に寝ていてください］
電子レンジに入れて、あったまるのを待つ間テレビをつけてお笑い芸人が出てくる番組を見る。
聞こえる嘘っぽい笑い声。ちっとも面白くない。
「……」
無機質な音だけがあって、外からはAの家の笑い声が聞こえてきた気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひーと - もっと、のびてほしいですね。凄く綺麗な作品でした！！ (2020年6月7日 1時) (
レス) id: 13fdaa35ac (このIDを非表示/違反報告)
小鳥@新田(プロフ) - めちゃめちゃ綺麗なお話で好きです……。ﾊｧﾝ…(謎の鳴き声) (2020年6月5日 16時) (レス) id: ded4ad57c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
