ん。３【音駒】

ん！ ページ43

合宿二日目の練習。

　

「ナイスキー！」


「おら、リエーフもっと腕をしめろバンザイするな！」


「はいっ！」



梟谷との練習試合が終わり、休憩に入りAからドリンクを受け取る。



『ん！』


「おー、さんきゅ」



目がバチっと合った。

昨日訊いた話を意識してしまって、とっさに目をそらし山本に声をかける。

くそ、自分でも分かってる。

意識をしていることに。



『……』



そのあとも、Aが話しかけようとするととりあえず近くの人に声をかけてしまう。



『クロ……』


「あ、木兎！試合やろうぜー」


『ク……』


「よぉツッキー！調子はどうだい、ん？」



馬鹿か、俺は。

トイレではーっとため息をつく。

顔を洗って、治らない寝癖をちょいちょいといじる。



「……」



自分でもわかってる。


　

　




　





Aのこと……俺好きなんだ。


　





　





好きな人だれかなんて聞けない。

夜久も、聞きたくなかったんだろう。

俺じゃないことを分かっているから……余計心に引っかかる。



「ダメだ、ちゃんと話訊いてやらにゃ」



かぶりを振って髪の毛についた水滴を払う。

トイレから出ると、廊下を歩いていたAにばったり会う。



「あ」


『ん』


「えっと……俺になんか話があるんじゃないんでしたっけ」


『……』



不機嫌にそうにしたAを見て、俺は何やってんだ。

と反省をした。

ん゛！→←ん。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す