さくさくの好きな人。 ページ7
「さくさくー！」
毎週水曜日。応援部はその日が休み。
なんでも喉のメンテナンスのために休みなんだとか。
そして必ず佐原は練習を見に来る。
「おー！ 佐原！」
「あっ！ 飯綱先輩ちあーっす！」
体育館の入り口にいる佐原に飯綱さんは手を振る。
毎週見に来れば、そりゃ顔も名前も覚えられる。
「メンテナンス日なのに、なんで応援しに来るの」
「いや、ちゃんと休めるために声のボリュームは抑えているよ」
それでもうるさいし通るんだけど。
「毎週見に来てくれてありがとな〜！」
すると、飯綱さんが佐原の頭を撫でる。
嬉しそうに「ちょっと、辞めてくださいよ〜！」といい髪がぐしゃぐしゃになる佐原を見て、俺はなぜかイラついた。
気づいたときには、飯綱さんの手を掴んでいた。
「……佐久早？」
「……辞めてください。人間の頭皮にはふけが沢山ついているんですから」
「えっ、あっ、おう？」
「ちょっと！」
「その手でボール触らないでくださいね」
立ち去ろうとすると、ぐいっとTシャツを引っ張られる。
「言い方ってもんがあるでしょ！」
「……それしか思いつかなかった」
「さくさくらしいけど！」
髪がぐしゃぐしゃのままムッとしている佐原は、急にハッとする。
「もしかして、さくさくの好きな人って飯綱先輩……！？」
「なわけねーだろ」
なんであの時はむかついたんだろう。
そりゃ、手を洗ってきてほしかったのもある。それとは、また違う意味で止めた。
……俺も手を洗ってくるか。
「だからぁ、佐久早はAのこと好きなんだって！」
「違う」
「だってAが頭撫でられていた時、凄い剣幕だったよ」
「……」
練習終わりに並んで帰っていたところ。古森に言われて俺はまた考える。
あいつのことが好き。そんなわけない。
そう思っているけど、心のどこかで本当に好きだと思っているのか……？
「……ちょっと、考えさせてほしい」
「？」
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