勝利の女神。 ページ19
NOside
時は現代、2018年。
「人員配置、オッケーです」
「ありがとう。お疲れ様。今回はホームゲームはあちら側だけど、遠慮なしで行こう」
「はい！」
Aはブラックジャッカルの応援団員になっていた。
指揮をまとめる役にもなっており、応援のリズムやチアの指示もすべて行っている。
「あぁ、宮侑の時は周りの人に気を付けるようにね」
「了解です！」
応援団員の一人にそう声をかけてAは学ランの裾を翻した。
「さ！ 気合い入れて応援していくよ！！」
・
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「まさか、あいつのために会社を変えるとはなぁ」
「それって、佐久早の彼女さんの話？」
古森はともに同じチームである鷲尾と角名に説明する。
「そそ。ブラックジャッカルに所属するって聞いて、すぐに事務としてMSBYに入って〜……
そん時の面接のときに、『応援団に入りたくて御社を希望しました！』って言ったらしくて！
そしたらそれを面白いと思った人事の人が即採用にしたってわけ」
「実際凄いよね。スマホの音声からよく通って聞こえるし」
「実況解説よりも目立つよなぁ」
「ほんと……目立つよ。誰よりも」
佐久早の強さを知らない人はいない。
全日本大学選手権では優勝に導き、なんとMVPを獲得している。
そこには、必ずAがいた。
「おっ、いつもの応援団長さんいる！」
日向が、目を輝かせる。
「佐原さんだっけ！ 俺も負けていられない！」
「いやいや、試合前に叫ぶなて！ 張り合うな！！」
大声を出そうとする木兎を、侑が慌てて止めていた。
応援席の先頭で応援の指示を出しているAを見て、
ブラックジャッカルのメンバーは盛り上がる。
ただ一人、佐久早を除いて。
「……」
ストレッチ中、応援席を見ていると遠くにいるはずのAと目が合う。
するとAは佐久早に向かって右手のこぶしを突き出し、ニッ！と笑った。
「さくさく〜！ ファイト！！」
この試合を見に、様々な人が来ている。
観客の騒めきをかき消すような、甲高い声は佐久早の耳に届く。
「ほんと……心に響くよ」
勝利の女神が今日も微笑んでいた。
FIN
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