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食った食わない。 ページ12
試合はあっという間だった。
準々決勝、犬伏東の戦いで主将の飯綱さんは足を負傷してコートを去った。
「……いつか来る本当の最後の試合は、絶っっっ対笑って終わってやる……！」
そして主力であるセッターを失った井闥山は逆転負けをする。
「……」
飯綱さんを見送った後、冷えた手を温めるために無意識にジャージのポケットに手を突っ込んだ。
すると、手の中でカサ、と何か感触があった。
左ポケットに入っていたのは、Aにもらったのど飴。
結局、食わないまま終わったな。
「なぁ、古森」
「ん？」
「……なんでもない」
こいつが食った食わないはどうでもいいな。
とにかく撤収をしなければならない。選手も、応援団も。
・
・
「さくさく」
「！」
決勝戦を見ようと廊下を歩いていると、すでにハチマキも学ランも着ていないAが立っていた。
「なんでお前……ここに」
もうすでに応援団は帰っているはずじゃ。
「やっぱりいた。私だって元バレーボーラーだし。試合は気になるでしょ」
Aは「まぁ、もう6年も前だけど」とぼそっと呟いた。
「席座ろう！」
見失わないように後ろを追いかけて、観客席の一番後ろ端に座る。
こいつ、俺のことをよくわかってるのがちょっと腹立つ。
「え！？ なんで機嫌悪そうなの！？」
「別に……」
「てか古森は？」
「見失った。どっかにいるだろ」
「えぇ……？」
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