貴方を目指して。 ページ47
「A、そろそろ練習だぞ」
『あぁ、ごめんなさいね』
パソコンを閉じて、ロシア語で呼ばれた方に向かう。
白鳥沢学園でもアタシはでかい方だと思っていたけど、ロシアのチームにいたらアタシはおチビちゃんみたいな感じ。
2mとか平気でいるからビビるわよね。
こっちではあまり化粧をしていない。
オネエというか、そもそもこっちではLGBTをあまり強く推していないし、第一びっくりしちゃうでしょ?
別にオネエだからとかそうじゃないとかは別。
練習が終わった後に、ボロボロのままモデルの仕事、もしくは仕事のあとにバレーだったり。
寮暮らしとはいえ、お金はかかるもの。
夜、いつもより寒いストリートを通っていると、誰かとぶつかり相手の持っていたバックが落ちてしまった。
散らばってしまった荷物を拾っていると、何かの資料が風にのり、空に舞う。
「あ、」
『アタシに任せて!』
助走をつけてジャンプをし、その紙をとる。
着地をして、その紙をみるとそれは写真だった。
……あら、どっかで見たことあるわね。
「スパシーバ!……日本の方ですか?」
あら、アタシ咄嗟過ぎて日本語を喋っちゃったみたい。
『えぇ。あ、写真は無事ですよ……あの、その写真は?』
「日本にいる息子の写真なんですよ。ずいぶんと昔に離れ離れになってしまって……もう、18になったのかな?」
男の人が笑った笑顔は、どこか見おぼえがある。
え、ちょっとまって、それにしてもそっくり過ぎない?
「すごいジャンプ力でしたね。何かスポーツを?」
『こっちのほうで、バレーをしています』
「そっかそっか、俺もバレーをしていたんですよ。怪我が多くて引退をしましたが……息子も、バレーをやっているといいんですが」
そう笑った後に、「本当にありがとうございました。またどこかで」と言い深々とお辞儀をしながら大事そうに写真を持ち、去ろうとする男性にアタシは叫んだ。
『あの!若は……若利は!日本で元気にやっています!
バレーも、ちゃんとやっています!
凄いエースです!!!
貴方を目指して!!』
男性は立ち止まり、そして振り返り泣きそうな笑顔をしたあとまたぺこりとお辞儀をした。
その日は、ひどく寒かったのに心臓がやけにドキドキしていた。
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Nagi(プロフ) - 大好きですっ!!! (2021年10月24日 1時) (レス) @page49 id: 974074d1dc (このIDを非表示/違反報告)
瑠衣 - すごく面白かったです!これからも頑張ってください! (2020年3月31日 22時) (レス) id: 44c29d146e (このIDを非表示/違反報告)
いすだ(プロフ) - クロネコさん» コメントありがとうございます!ハマってくれてうれしいです!! (2019年10月17日 23時) (レス) id: f860ac395f (このIDを非表示/違反報告)
いすだ(プロフ) - 短気っきーさん» ありがとうございます!オネェ男子最高です……作者様の紹介ありがとうございます。今度見てみますね! (2019年10月17日 23時) (レス) id: f860ac395f (このIDを非表示/違反報告)
クロネコ - とても面白かったです!!ハマりました!! (2019年10月17日 20時) (レス) id: ba8b81f396 (このIDを非表示/違反報告)
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