子供体温【北信介】

気温は6度 ページ6

人のすくないバスの中、うちと北君はいつも一番後ろの左側に座る。

うちがいつも一番最初に入るから、窓側になる。



「はーっ、バスの中はやっぱ暖かいなぁ」


「また寝んなよ」


「さすがにね。あ、手袋返す。おおきに」



無難な黒色の手袋をはずして、北君に返す。

その様子をじっと見ていた北君は、口を開いた。



「Aの手、ちっさいなぁ」


「え？」


「手袋しているとき、ぶかぶかやったから」


「ああ……そりゃ、男と女やったら大きさ違くって当然やろ」


「ちょっと手、貸してみ」



強引にうちの右手を取って、自分の左手と重ねられる。



「おぉ、ほんまや。大きさ全然違うな」



手のひらから伝わる温かさ。

第一関節くらい違っていて、ごつごつしている。

この手でバレーして、皆を支えてきたんやろな。

ちっこい時は同じ手やったのに、いつのまにか、こんなに。



「A？」


「あっ、すまん！」



うちは北君の手をぎゅっと握っていた。

あかん、無意識や！



「ほんま、Aの手は冷たいなぁ」


「何度も言わんくてもいい」


「つまりは、心が温かいってことや」


「……北君は、心も温かいで」



いつものように、手を握られる。

不思議な感じや。さっきから心臓が煩い。

じわじわと、心臓から、手から温かくなってくる。



「……ぬくい」



この時間、ずっと続けばええのに。

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