俺んちの黒猫。２【黒尾鉄朗】

全ての思い出。 ページ22

そして、だんだんと映像は変わっていく。

プールの時の鉄朗。ご飯を食べている何気ない日常の一部の私。

中学でのバレーでサーブをし始める鉄朗。日向ぼっこをして大あくびをしている私。

一人と一匹で、寝ている写真。

どれもこれも鮮明に脳裏に映る。

映像に残っていないシーンも、全て思い出される。



『ごんのすけー。』


『なぁ。』


「…はは、俺、ごんのすけばっかり呼んでいやがる。」



それは無意識なのかもな。

私も、どこかで鉄朗のことをずっと呼んでいた。



『これからもずっと一緒だからな！』


「…これからも。」



私の鼻先に、何か冷たいものが落ちてきた。

鉄朗は、テレビを見ながらただ涙を流していた。

全く、こいつは泣き虫だ。

初めて会った夜も、私がいなくなったときも、いつも泣く。

そして、いつもそのあとに笑う。

テレビに映る映像は、だんだんと大きくなっていく鉄朗と、だんだん動きがゆっくりになる私が移されていく。

つい最近撮った映像が、映された。

鉄朗の、自撮りだった。



『うぇーい、ごんのすけ。俺は春高で優勝するからな。』


『なぁ。』


『おうおう。ごんのすけもそう思うだろ？絶対に優勝するからな！！』



そして、映像が切れた。

鉄朗は、私をやさしく抱きしめた。

嗚咽を殺し、震える体。

笑え、鉄朗。

明日は春高決勝戦だろう。

目が腫れてしまったらしまらないぞ。



「絶対、優勝するから。」



顔をあげた鉄朗は、涙の筋があるものの、笑顔だった。

決勝当日の朝。→←小さい頃の鉄朗。

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