本当は誰でもいいんでしょう？【赤葦京治】

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俺は赤葦京治。今日も言いたくないことを言い、やりたくないことをやる。
　

感情はあるのに、台本のまま動くただの人形？



「A、さん」



次に来たのは、最初の暗い部屋でパソコンの明かりだけを照らしているあの彼女だった。



「で、いいんですか」


「……」



おそらく、名前を変えているだろう。


自己投影をしない感じだろうか。


彼女は俺の言葉が届いていないから、ずっとパチパチとパソコンを打ち続けている。



「俺は、一体なんなんですか？ 他の誰でもよかったんじゃないんですか。

貴方は今、俺を書いてくれている。でも本当は、木兎さんや、月島や、他校の人やあの兵庫の双子でも……

貴方は、口調や仕草を変えれば誰にでも変えられるはずだ」



届くはずはない。だけど、俺はそれを言って、ハッと気づいた。


眼鏡をかけたボサボサの彼女が、俺をじっと見つめている。



「そんなわけない」


「っ……」

　
「私は、この小説はお前しか当てはまらないと思って書いている。

お前にしか持っていない感情。お前にしか持っていないその優しさ。

人気とか関係ないよ」



無表情でそう淡々と言い、優しく微笑むとまたパソコンに向かって文字を打ち込み始める。



「……そうか」



俺は赤葦京治。


読んでいる人に、書いている人に、希望や夢を与えるのが、俺。

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