いらない。７【牛島若利】

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10月の体育の日。

すごく天気のいい日なのに、体育館に籠っての練習。

だけど開け放っている窓から気持ちいい風が入る。

外にタオルや予備のビブスを干していると、覚君がうーん、と目を閉じているのが見えた。



「覚は何をしているんだろうな」


「ね」



ひょっこり話しかけてきたのは獅音君だった。

たぶん、私が覚君を見ていたから話しかけてきたんだろう。

いつもうるさいくらいなのに、静かなのが変な感じだ。

もしかして、体調悪いのかな。



「何してるの？覚君」


「んー？」



いつものぎょろりとした目が私たちを捉える。



「必殺技のイメトレ！」


「……あぁ」



ちょっと聞いて損したかな。



「『流星と書いてシューティングスター』のやつか」



動じない獅音君。もう慣れた感じでうんうんと頷いている。

流石だよ……。



「いや、あのさ、こないだサインの練習をしてた時、フリガナのバランス悪いなーって思ったんだよね。

『流星』の二文字に十一文字じゃん？そこに気づく俺の美的センス！

ね？で、もいっこ新しいの考えようと思ってさ！」



話しかけたのをちょっと後悔したかもしれない。

つい気になってしまうんだよな……。

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