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hk side
家を出てから2週間がたった。
薮からの連絡はない。各々の仕事の方が多いので、今日みたいな全員での仕事でもないと、なかなか薮に会えない現実に気付かさせる。
薮の中ではもう終わったことなのかな。そんなことを考えて楽屋のドアノブを持つ手が震える。
今日こそは薮と話をしようと決意して楽屋の扉を開ける。今日も一番乗りだ。
俺は椅子に腰掛け、スマホを弄りながら薮が来るのを待った。
「ひか、おはよー。」
「おはよー、光くん。」
「ひかるぅ〜、ちょっといい?」
楽屋にメンバーが集まってくる。
薮遅いなぁ、と小さく息を吐く。
「セーフー!」
勢いよくドアが開いた。大ちゃんが息を切らせて、野球の審判員みたいなポーズをしている。
「はよーす!大ちゃん、ちょっと邪魔。」
薮だ!俺は立ち上がり薮の方へ足を向けるが、
「薮ちゃん、遅いよ〜!」
「いやいや、大ちゃんに言われるとか無いわー!」
「いやいや、オレこの前も仕事あったからだし!」
会話を切るのもなと思い、様子を見ながら待つことにした。
チラチラ二人を見るが、話が弾んでいるようだ。
「次でーす!準備お願いしまーす!」
とスタッフさんの声が聞こえて、みんな移動を始める。仕方ない、帰りに声かけることにしよう。
今日は歌番組の収録で、何回もお世話になっている番組だから、スタッフさんとも気心が知れてるし、勝手も分かってるからスムーズに収録が進む。
「ありがとうございましたー!」
収録が終わって、全員で楽屋へ向かう。前を歩いている薮を追いかけようとした時、他の番組で共演しているタレントさんが通りかかって挨拶をする。ちょっとだけ話し込んでしまった。
急いで楽屋に戻ると薮はもう居なかった。
「やぶ…」
何でだよ!と怒りとも悲しみとも分からない感情が沸き上がる。
飲み物を買いに行っていたであろう、山田と知念と裕翔が戻って来た。
宏太もう帰ったんだー、とキョロキョロしながら知念が俺に向かって言う。
別に俺が家を出たのは知念のせいじゃないが、なんとなく知念に近寄らないようにしていた。
「宏太さー、最近変じゃない?」
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作者名:黄色の梅 | 作成日時:2019年11月19日 11時