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目を開くと、見覚えのない真っ白な天井だった。


「……?」


なんでここにいるのか思い出せない…。そもそもどこだ?どこかで大ちゃんの声が聞こえる。


そうだ、今日は山でキノコ狩りのロケで…勾配もキツいし昨日の雨で斜面がぬかるんで滑るから気を付けようって…。


思い出したように頭が痛みだす。ゆっくりと痛みのする額に手を持っていくとガーゼか何かに触れる。


あぁ、おれ滑って落ちたんだ…。


腕を見ると病衣から出ている腕にはガーゼやら包帯やら巻いてある。でも、動きに問題は無さそうだ。


やってしまった。かなりスタッフさんや他の演者さんに迷惑をかけただろう…。


状況を確認したいが誰も居ない。大ちゃんも声はするのに姿が見えない。おそらくベッドを仕切るカーテンの向こう側に居るのだろう。


声を掛けようとして、聞こえてくるもう一つの声にハッとする。俺の大好きな人の声、でもここにいるはずのない人の声…。あり得ない。ここは新幹線と車を乗り継いで来たんだ、気軽に来れる距離じゃない。


「えっ、帰るの?ひかが起きるの待ったら?」


「取り敢えず大きな怪我は無さそうだし、顔も見れたし帰るよ。明日朝早いからすぐ戻らないと。」


「そっか、じゃあ伝えとく。」


「いや、言わないで。心配でわざわざ来たとか恥ずいし。それに…困らせたくないんだ…。」


「……分かった。」


ドアが開く音がして、二人が部屋を出ていく。


俺はゆっくり起き上がると、足をベッド横に降ろし立ち上がった。うん、痛くない。


ゆっくり窓の方へ移動すると、そこからは病院のロータリーと駐車場が見える。暫くしてロータリーに大ちゃんと並んで出てくる姿が見えた。長身を折り畳んでタクシーに乗り込み、走り去るのを大ちゃんが手を振って見送っている。


こんな所まで来てくれたんだ。
申し訳ない気持ちと隠しきれない嬉しさ。


自分でも単純だと思う。
けど、心配して会いに来てくれたという事実が俺の心をゆっくりと地面に着地させる。


ここ何ヵ月かの自分を思い返すと、浮き足立っていたなと思う。らしくないと言えばそれまでだが、らしくなかった。


だから、今回のミスも必然だ。周りに掛けた迷惑を想像し、窓枠に掛けていた手を固く握りしめる。
俺は雲間から広がる薄紅色の夕焼けを眺めながら、一つ一つの仕事と丁寧に向き合おうと気を引き締めた。


もう迷わない。
自分の気持ちが見つかったから。

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作者名:黄色の梅 | 作成日時:2019年11月19日 11時

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