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裕翔の腕が震えている。結局、昔から俺らの後ろを付いてきた裕翔が、俺はかわいい。もう背も追い越されたし、カッコイイと言う言葉が似合う大人の男になったのに、裕翔のお願いは聞いてやりたくなる。


俺は勢いよく裕翔の胸辺りを押す。ちょっと力が入りすぎて裕翔が後ろへよろけた。
今にも溢れそうに潤んだ瞳は、拒絶されたと思ったのか悲しみを従えている。


「今日だけだかんな。…絶対なんにもすんなよ!絶対だぞ!キ、キスもだかんな!」


我ながら子供じみたセリフに顔が熱くなる。雰囲気ぶち壊しだ。


潤んだ瞳は、一瞬驚いたように目を開いた後、堪えきれないように笑いだす。きっと俺の顔は情けなく真っ赤だ。


「くくっ、分かったよ。頑張る。」


裕翔はひとしきり笑った後、目尻に溜まった涙を掬いながら光くん超可愛いー、と口元を緩め嬉しそうにスーツケースを押してリビングに戻る。俺も後ろをついていく。


それから他愛ない話をして、風呂を済ませ、さあ寝るかって時だった。


「ひかるくん、こっちこっち!」


「はぁ!?そこゆうとの寝室だろ!?」


「大丈夫。絶対何もしないから!」


裕翔がニヤニヤして言う。絶対バカにしてる。
動かない俺の背中を裕翔が押して歩く。


ベッドの前まで行くと、裕翔はそこへ先に自分が入り、手前に隙間を開けて、ポンポンとベッドを叩いた。ここに入れってことだろう。


俺は意を決してゆっくりと布団に入った。セミダブルだろうか、狭いって程ではないが肩が触れる。俺は落ち着かなくて、裕翔に背を向けるように寝返った。


裕翔もうごうごと動いたと思ったら、後ろからぎゅっと抱き締められた。と同時に裕翔の片足が俺の足の間に滑り込む。


「ゆ、ゆうと、な、な…」


「抱き枕…。ほんとこれだけだから。」


首もとに裕翔の息がかかる。裕翔は大きく息を吸った。


「んー、シャンプーとひかるくんの匂い。」


「ばっ!やめろ!!」


…その時、感じる違和感。


「…ゆ、ゆうと。あ、当たってる。」


明らかに反応している裕翔の…。


「それは…うん。気にしなくていいから。」


「え、でも…」


「…いいから。」


おやすみ。裕翔が耳もとで囁いた。


裕翔の唇が俺のうなじに当たっている気がする。くすぐったくて、んっ、と声が漏れた。恥ずかしくて、誤魔化すように口早におやすみと言って目を閉じた。


こんなんドキドキして絶対寝れない…と思ったのに、俺はあっという間に眠ってしまったようで記憶がない。

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作者名:黄色の梅 | 作成日時:2019年11月19日 11時

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