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ar side
「今日さー、オレなんかやらかした?」
風呂上がりにオレの部屋着に着替えた光くんに、キッチンで飲み物を用意しながら言う。基本大きめの服をだぼっと着ることが多いから、オレの部屋着は思いのほか光くんにぴったりだった。
光くんはソファー前のローテーブルでなぜかジェンガを一人奮闘中。前に飲み会したときに誰かが持ってきて、そのままうちに置いてあったやつだ。
真剣な表情で、綺麗な長い指を右に左に上にと動かしている。ときどき口がむにむにと動く。
「なにがー?」
「何か責任取ってよって言ってたじゃん。」
光くんが、あーと少し上を見上げる。
「あー、そおだっけ?」
そう言って口角を片方だけ上げて笑うと、またジェンガと向き合った。ここかなとか、あっ、でもダメか、とかブツブツ聞こえてくる。
「なんかさ、最近俺ダメダメだわ。考えても分かんないことばっか…」
光くんはボソッと言った。
俺は、両手に持ったグラスの一つを光くんの前のローテーブルに置き、もう一つは手に持ったままダイニングチェアに腰掛けた。
光くんは下の方の端にあるパーツを、鉤の形にした人差し指で引っ張り出そうとしている。いや、そこ抜いたら…と思った瞬間、ジェンガは崩れ落ちた。光くんはあーなぁんだよー、と残念そうだ。
「ひかさ、あんまり考えても無駄だって。頭使うの苦手でしょー。」
「何だよ、それー。ひでぇ。」
口を突き出し、いじけたように言う。
「だってさー、そんなとこ抜かないって。絶対倒れるって分かるじゃん。」
「えっ、そうなの?」
目を丸くすると言う言葉そのままの表情で、俺を見上げる。
「そうなの。誰かも言ってたじゃん。ひかは天才肌?芸術肌だっけ?考えても分からないならさ、直感?でやるのもありなんじゃない?」
「でもそれ…、余計すぐ倒れそうじゃね?」
と首を捻るが、
「ふーん、でも、そっか。」
と、納得したような、納得していないような顔で倒れたジェンガを見た。
「大ちゃん、俺今日ベッドね。直感がそう言ってる!」
「おい!」
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作者名:黄色の梅 | 作成日時:2019年11月19日 11時