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12(hk side) ページ12

hk side

目を覚ますと、そこはベッドの上で、隣には薮が俺の腰に手を回し、抱きしめるように寝ていた。まだ外は暗い。


体は綺麗にされ、パジャマも着せられている。
寝返りを打とうとすると腰に鈍痛がはしる。


薮はやさしい。昨日だって、最初のキスこそ強引だったが、俺を触る薮の手はずっとやさしかった。

俺は薮の声に、触れる手に弱いとつくづく実感した。いや、薮の全てに弱いのだろう。


薮の前髪をなぞるように撫でると、眉間にしわが寄る。かわいい。
薮の顔を見つめ、手の甲でそっと頬に触れる。


好きだから、もうどうしたら良いか分からない。薮のことを思えば、別れなくちゃいけないと思う。でも、こうして顔を見れば、肌を合わせれば、離れたくないと強く思ってしまう。


子供の頃からずっと一緒だった。恋心に気付いて少し距離を置いていた時期もある。
いつからとか、どこがとか考えたこともあったけど、結局解らなくて、薮に笑いかけられただけで、薮に頭を撫でられただけで、急に大きく速くなる心臓の音だけが答えだった。


俺は薮を起こさないように、そっとベッドを抜け出し、床に落ちてる服に着替える。ベッド端にしゃがみ込み、もう一度薮の顔を見る。全部が男らしいはずなのに全部がかわいいと思ってしまう。もう一度頬をなぞり、部屋を出る。


玄関を出て、鍵を閉める。エントランスを抜け、まだ薄暗い街灯の下をあの日と同じように歩く。


思い立ち俺は顔を上げる。少し先の街灯の下に人影を見つけた記憶が誰かを探させる。でも、当たり前だけど誰もいない。


昨日の裕翔の顔がちらつく。


帰ろう。
自然にそう思っていたことに驚く。俺の家はさっき出てきたあの部屋なのに。

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作者名:黄色の梅 | 作成日時:2019年11月19日 11時

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