金木君にプロポーズ (ページ7)

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束の間の・3 ページ7

『それにね、今空き部屋が４つあってね、一つに私と金木君、一つにあの小さな女の子とイケメンさん、一つにガタイの良いお兄さんとその仲間の人達で暮らそうよ。そしたら人が集まって賑やかでしょ』

『だから、ね、帰ろう』
「うん、かえ、ろ、う」
『…っ、良かった……！』

意識がある、ならば助かる可能性は高くなったと思っても良いだろう。

そして、そんな私の心配を他所にゆっくり、ゆっくり語っていく。

「Aちゃんが引っ越す所は賑やかな所なんだね…、良いなぁ、僕も一緒に暮らしたいや」

「それに、君の誕生日も盛大に祝わなきゃ、じゃなきゃ不公平だよ。そうた、指輪、気に入ってくれた？Aちゃんが前に言ってたよね、12月の誕生石ならタンザナイトが好きって。だから僕と君との誕生石にしたんだ。お金は自分で出そうとしたんだけど、月山さんって人が僕に払わしてくれってうるさくって、結局お願いしたんだ」

「でも、春には桜を見に行く以外にも暖かい空気で本を静かに読んだりすることも出来るよね。それに夏には山に行ったり、海で沢山泳いだり、かき氷とかを食べていっぱい遊ぼう。あきにはキノコとかさつまいもとか食べ物を沢山食べよう。Aちゃん、たべるの大好きだもんね」

「冬には青森とかにもいって、雪の壁を見にいくのもいいね、他にもクリスマスは豪華に飾りつけて、プレゼントの交換とかもたのしそうだよね」

時間が近付いて来るのが分かった。
幸せな時間は早く過ぎる物で。
余りにも今までが幸せ過ぎた。

どうして、どうして今が一番幸せだと気付けなかったんだろう。

けれど、気付かない事も、ある意味幸せなのかも知れない。

金木君が、私の腕の中でどんどん冷たくなって行く。

心地よい体温は無くなっていった。

「A…いままで、ごめんね、ほんきで、うけとめたこと、な…て…、ず、と、じょーだん、だとお、も、ってた、けど、」
『良いよ、もう、良いよ。ここから抜けたらの話をまたしよう。ここから抜けたら＿＿＿＿＿』

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『お爺ちゃんお婆ちゃんになって、ゆっくり珈琲を一緒に飲もう』

その言葉にゆっくりと、大きく頷いて、そして息絶えた。

いや、もしかしたら生きていたかもしれない
このときの私は正常な判断が出来ず、金木君が死んだと思っていた。

そして、生きてる内には出来なかったキスを、沢山の花が見守る中で行った。

そのまま、ゆっくりと金木くんの目から手を離し、逃げる様に走って地上へと出た。