苺の王子から「楽曲提供者になってほしい」と頼まれた件。【stxxx】

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Noside＿＿＿＿



「和沙(かずさ)…。お前、マジで帰ってくんのか？」

『はは、僕が帰ってきたら何か悪いかな？』

「悪いなんて言ってねぇけど、さ…」



そう言って電話越しの人物に呆れているのは、音宮 星羅(せいら)。

Aの兄で、音楽界の優等生と呼ばれている。もっとも、性格は優等生ではないのだが。



そんな星羅は冬休みの帰省の準備をしながら、“ある人”へ電話していた。



『だって星羅も冬休みには帰るんでしょう？だったら僕だって帰っていいじゃん』

「だーかーら、悪いなんて言ってねぇ。ただ驚いただけだ。

だって海外から帰ってくるんだろ？」

『もちろん。ちょっと、Aちゃんに会いたくなってね』

「お前…」

『あ、大丈夫大丈夫。結婚することになったら心配症の星羅お兄ちゃんにもちゃんと報告するよ。急に奪ったりしない』

「俺をシスコンみたいに言うな」



星羅が電話をしている相手＿＿＿、それは旋璃(せんり) 和沙。

星羅と同級生の親友で、海外へ音楽留学しているバイオリニスト。

実は、昔Aに告白したという、彼だ。



『それはそうと、AちゃんはボカロPとして活躍してるんだよね？』

「あぁ。それに、今は“すとぷり”っていうグループの楽曲提供をしてるんだとか」

『うん、聴いたよ、すとぷりの曲。
曲は良かったんだけど、男の人のグループに楽曲提供をしてるなんてちょっとショックだな…。え、Aちゃん、好きな人とかいないよね？』

「知らん。Aがすとぷりと交流を初めてからは電話でしか話してない。Aも忙しいだろうから」

『へぇ、星羅お兄ちゃん優しいね』

「馬鹿にするな」



星羅は昔から変わらない和沙に呆れながらも、安心していた。

でも、昔から変わってない=Aのことがまだ好き。



…帰ってきたときにめんどくさいことにならないといいが。



「…今年の冬休みは休めなそうだ」

『ドンマイ』

「和沙のせいだっつーの…」



そして和沙は『また冬休みあおーね！』と言って、通話を切った。

黒くなった画面を見て、星羅はため息をつく。



「…和沙が“すとぷり”のメンバーと会わなければいいんだけど…」



＿＿＿嫌な予感ほど、当たるものなのだ。

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