私わがままドール【クロロ=ルシルフル】 (ページ8)

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いかりのおとページ8

それが目だと言うことは少女にも分かった。
だけどそれ以外のことが分からない。
記憶が無い

赤い、丸い、瞳、

何かわからなかったが心の底から怒りと悲しみ憎しみが溢れ出てきて絶叫となってへやに響いた。

少女を繋いでいた鎖はちぎれ折れた足で立ち上がる
口枷を噛みきり男に向かって1歩歩いた

男を突き飛ばしちぎれた鎖を首にまきつけて絶叫と共に締め付けた。バタバタと暴れるが間もなく男の首は床に落ちた

何に怒ってるのかも分からないそんな状態で少女は初めて人を殺めた

少女の瞳は残酷なほど美しく緋色を映していた

細くやせ細った手で鉄の重たい扉を開けて、地上への階段をフラフラと登る。残りの３人はいない。

ふらふらと歩いて建物を出ると真っ直ぐ歩く。
どこに向かっているのかなんて本人も知らない。人里は反対にあるのに森の中へ進んでいく。

折れた足ではそんなに遠くへは行けない。治りかけとはいえ
適切な治療を受けていない足だ。少し歪な形でくっついてしまって歩き方がぎこちない。日の目を浴びていなかったから体力もない。

1キロほど歩いて水辺の近くまで来ると意識を失ってしまった。

少女は次に目覚めたとき全てを忘れていた。自分の素性も親の顔も人間の社会のことさえも。

｢…にー｣

｢人間が猫に育てられるとは珍しいな。｣

野生の動物たちは甲斐甲斐しく少女の世話を焼いた。
少女が猫と過ごす隠れ場所の前にはたくさんの木の実が置かれ、野良猫に服を引っ張られて水辺まで連れていかれ魚の取り方をやって見せた。

見せられても理解もしてなかったようだが。

ある日木の上で座り猫に頬を舐められていたところ一人の男が通りかかる。

初めは近くに座りその様子を眺めていたが猫が木から飛び降りそれを真似て少女も飛び降りようとした所を黒髪の男……クロロに捕まった。

すぐに猫が警戒しシャーと牙を剥くが｢悪いようにはしないさ｣と頭を撫でられすぐに警戒を解いたようだ

それを見ていた少女も｢しゃ｣と呟く。
顔には一切の表情がなく目も虚ろでガリガリ。更に猫に世話を焼かれている有様。

違和感を感じ自分の手を見つめる少女を見てクロロは静かな笑みを浮かべた。

木から飛び降りる際に切れたのだろう。細く赤い線ができていた。少女の瞳も同じように赤くなっていく。